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リチウムと手紙

この夜はもう終わりだよ お疲れ様
でもね あんたにとても伝えたい事がある
あんただけじゃなく
この夜に見て欲しい
あんたは天才だったよ
でも
あんたが世界中に最後に伝えたかったのは
「愛」でも「夢」でもなく
「自殺」でしたか

 

僕は叫ぶしか能の無い一人だ
叫ぶ事も出来ないでいるその他大勢だ
花火みたいにボロボロのニットだ
その感触をこの夜と思うんだ
スニーカーはき潰しても
汚いと思われるだけのその他大勢だ
夜に迷った一人だ
物があふれて心がからっぽな一人だ
手足も魂も無い生活だ

 

そこでリチウム 手に取る
少しの間 救われるから
あんたはもう天才なのに
何で天才が天才になりたくて死ぬんだよ

 

理解されずに苦しかっただろう
僕らその他大勢よりずっと
でもあんたは攻めを選んだんだろう?
他の皆が守ってくれたからだ
気づいてましたか
いくら周りに理解されなくても
少なくとも僕はあんたを楽しみに待ってたのに

 

リチウム 手に取る
「一度に全部飲めば死ねるだろう」
言葉だけ飲み込んだ
生きて救われたかったから

 

マル劇飲んでこの夜に叫ぶのさ
夜の公園の負け犬の様だ
それでも僕は「自殺」なんか伝えたくないな

 

あんたは確かに苦しかったのだろうけど
天才は何故か早く世を去る
本当はそういうの 少しはあったんじゃないかな
悲しいけれどそう思うんだ
何で天才が天才になりたくて死ぬんだよ
あんたのもういないこの夜に向かって叫ぶのさ

 

僕の半生とは永遠に続く夜だった
朝が来たと思って見上げれば それは月だ
リチウム 手を出して
一錠飲めば 楽になるから
夜に迷った天才に 見て飲んで欲しくて
あんたと夜への手紙だ
リチウム 勇気を出して


1
最終更新日 : 2017-10-07 15:20:15

僕が廃人になる前に

ホームを過ぎて
階段をかけ下りる途中
「生き急ぐな」 って誰かがつぶやいた
あなたこそ急いだ方がいいのに

 

僕はいつの日か廃人になるんだろう
でもいつかこの体失くすのは
誰だって同じだ
遅いか早いか
止まる事を知らない秒針
地下街で腕時計を見ていた

 

決められない事がほとんどの世の中で
決める事ができるわずかな事
大切にして
あなたの目が輝いているなら
その目が誓った事
血管がさわると忙しく動くなら
それも切る事ができる事

 

紙 数字 自分らが作ったものの
あやつり人形か 僕らは
画面に貴重な時間奪われ過ごす
それが拘束ならば抵抗しよう

 

決められる事
それが人間でいられる事
何も一人で決められなければ
何もできない廃人と同じだ
ねえ 今日のお風呂どうしよう?
頭洗おうか
走ったからなぁ でも疲れたな
自分で決めてよ


自分が一人決めて行動したって
世界は何も変わらないと思うでしょう
この世界はあなたには決められない
あなたの見ている世界だけが変わるよ

 

僕はいつの日か 廃人になるかもね
なぜかそれを早いと思わないんだ
もしかして100歳過ぎてずっと後だったりして?
決められるようになってから
僕は人間として生きてきた
夢さえ他人まかせの子供時代
息さえできないくらいに生きてる

 

この本買おうか?
通販にしようか?書店へ行こうか?ダウンロード?
あなたの世界を変えるかどうか
紙や数字に抵抗か
自分で決めて
誰に愛を誓うの 何を約束するの
人間なら あなた一人で決めてよ


2
最終更新日 : 2017-10-07 15:22:21

メンヘラ I Love

LINEをやるには相手が要る だから彼女はやらないと言う
僕が相手になろうかって言ったら
まず電源入れていないから 
もうスマホ以前に ネットすら壊してしまいたいと
彼女はそう言ってなぜか泣く
僕が泣かしたみたいだ どうしよう

 

「日の光がまぶしすぎて 死にそうになるね」
白すぎる一重まぶた 振り向いた
「あたしはあと1秒で 消えてしまうんだ」
その気持ちわかるのは世界広くても 僕だけだと思う

 

僕がメンヘラの君を好きになったのは
君の机に置かれた 遺書を見つけてから
孤独なんてものは 失敗なんてものは 誰にでもあるのに
それに打ちのめされてしまう君は
優しい人だ

 

優しさゆえに苦しむ
知的さゆえに悲しむ
はじめから何もかも
わかっていたと目を腫らして泣く
今はメンヘラの君を僕は好きだ


3
最終更新日 : 2017-10-07 15:20:15

貯金の目的

武器を買おう 明日買おう
もう午前かもしれないが
昨日も買った 武器を買った
何だったのか もう忘れた
祖父に会うと 朝に会うと
何言っていいかわからなくなんだ
胸が痛い 我慢と欲望
昨日仕事を辞めたんだ

 

スマホ片手 あるいは両手
RPGの中で生きている
魔法使った 敵倒した
現実に戻って王国は何処
そうかそうか あんた嫌いだ
ゲームの中こそ現実だ

 

金貯めたって 仕方ないさ
紙幣は燃えてパッと消える
どうせ消える どうせ消える
人生消費しなきゃすぐ消える
祖父に今日は?って尋ねられた
正しい事やってて胸が痛い
「今日は休み 休みとった」
祖父は「貯金して家建てろ」って言った

 

希望と欲望 欲望と希望
その境目はどこにある?
まだ起きていた 時計を見た
僕以外寝てしまっていた
盾を希望 モンスター所有
こっちじゃ勇者なニート廃人
貯金しろ 貯金しろ
将来なんか聞かないで

 

キッチンの方 ヤバい音がした
何かが焦げるような臭いだ
隣の部屋 祖父起こした
もう何もかも捨てて逃げた
あんまりだ もうあんまりだ
両親は今何処にいる?
スマホ何処だ 現実何処だ
すすだらけのわが家だった

 

仕事も無い お金も無い
買った武器さえすぐ消えた
何がある 何がある
「仕事に行きなさい」っていう祖父だけだ
何も知らない 何がわかる
関係者以外はニートって言うな
「孫のお前が 生きててよかった」
そう言って笑う祖父だけだ

 

貯金しよう 貯金しよう
金貯めてもはや何になる?
燃えて消える 濡れて消える
今日食べるためだけに荷物運ぶ
見た目は笑顔 中身はゲーム
自分が魔法にかかっている
希望と欲望 希望と欲望
欲望あるだけマシだと夜中小声
まずはスマイル ただのバイト
上の階へ運べ 誰か怒鳴る

 

貯金の目的って何だろう
どうせ苦労して働いて
燃えて消える 燃やせば消える
あんた嫌いだ 祖父も嫌いだ

 

祖父は80過ぎ さすがに働けない
僕にもそれくらいのプライドはある
つまり働いた 僕は働いた
消えてしまうものを稼ぎ貯めるために
行きはナメクジ カタツムリ見て
渦巻き傘を欲しがって
帰りコンビニで 美味そうなチキン見て
ただ見るだけ ただ見ているだけ

 

仕方なく貯金 意味無く貯金
祖父しかいない 武器も家も無い勇者
祖父に打ち明ける 仕事辞めた事
笑って言った祖父「お前は働いてる」
腐った希望のため それとも欲望のため
ゲームの仲間に申し訳ないため
笑顔が何になる 貯金が何になる
僕は働かされ やがて燃えるだけ

 

貯金はどんどん増えていって
もう小さなマンションの部屋くらい買えそうだ
でももう祖父はここにいない
ゲームも魔法も武器も無い やらない

 

何もかも我慢 食べ過ぎも我慢
小さな娘にあげた 自分のごほうび
外でも我慢 家でも我慢
必死で紙幣数える手 娘のために我慢

 

写真の祖父の前 胸がもう痛くない
祖父に祈るより 本当は聞いて欲しい
そこで聞いて欲しい

 

季節は過ぎ貯金の目的を僕は僕なりにこう解釈した
いつか消えてしまうお金を貯める事じゃなく それも大いにあるが
何を失くしても誰かのためにお金を貯める事が出来るような
「我慢」を身につける事だった 我慢の練習で貯金するんだ

 

祖父に祈るより 聞いて欲しい
チキン買ってきて半分 写真の前に置いた
欲望と希望 欲望と絶望
顔が見れなければそれはただの欲望だろう
だとしたらこの気持ちは希望


4
最終更新日 : 2017-10-07 15:20:15

寝起きの幻

世間はそういうの「未練がましい」と言うかなあ
忘れられない僕は何となく枕抱いて眠る
ああ 野暮ったいスーパーのパジャマ
高級なキミにふさわしくない僕と
汗の匂い

 

朝の街ゆく人を見ていた みんなどこへ行くんだろう?
僕は交差点の真ん中だ
外車が堂々と上を通ってゆく
それでも僕は今交差点の真ん中だ

 

地球の重力に 肺が押し潰されそうになった時に
タオルにシュッとひと吹き キミのくれた香水を
鼻にあてるよ
キミは今どこにいるの?もう仕事終わった?
タオルの向こうにキミを見ている
そういう意味で僕は変態

 

かなりダメもとで キミが好きと
深夜メールで打ち明けてみた事があるんだ
結果はもう忘れたと言い張る事にしてる
恥ずかし過ぎる話だから
誰にも言わないで
炎上しそう

 

僕はキミたった一人に向かって
もはや300以上の詩を書いてるし
それが寝起きの幻だって事もわかってる
明らかに未練がましいし
自分でも読み返してそう思ったよ

 

夜はタオルにシュッと これが習慣で
キミのくれた香水を鼻にあてるよ
キミに伝えたい

 

「ありがとう」以上の言葉を
誰か開発して下さい
「ごめんね」以上の言葉を
誰か開発して下さい
ああ もし翼があって
どこへでも飛んで行けたらな

交差点の真ん中で 泣きながら笑う 僕は変態


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最終更新日 : 2017-10-07 15:20:15


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