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書くべき事

(二〇一五年一一月三日《七時一四分》記)

 書くべき事は山程あるのだ。しかし体が追い付かぬ。追い付けぬのである。あれも書かねば、これも書かねば、あの事もこの事も、彼らの事もあの人の事も、…こんな風に心の中では常時苦悩が呻くように、「書くべき事」が渦巻くのだが、尽きぬ流水に体が追い付けぬよう、尽きぬ経過へ体力が追い付かぬよう、膨大な宇宙にその思考が追い付けぬように、俺の気力は筆を執る以前(まえ)に辟易するのだ。そして萎える。「萎える」とは、文字通りに体が萎えるのでなく、「あとでいいか」として、そのとき書く覇気に萎えるのである。つくづく、天邪鬼、いや自分の理由無き怠惰を思う。しかし、書かねばならぬ。今、ここで「書くべき事」などを記さずに「或る特定の人物」の事を記そうと思ったのだが、この記述が先に出たのだ。そう、この「書くべき事」を、その「特定の人物」について書くより先に記さねば成らなかったのか。どうもすっきりせぬ。何か体の中で、「出さねば成らぬ魂」のようなものが、悶々呻いて、蠢いているようである。今、『夢日記』を書いている途中に在る。だからだろうか何時間か前に、俺はPC前(ここ)に居たのだ。休憩と称してベッドに就き、暫く又いつもの気晴らしをした後で休憩通りに眠った。もうこれが既に昨日の事。夢を見て、『夢日記原本』を付けた。そしてこのPCの電子メール宛に送った。あとでその校訂を為す心算である。これをもう何年も繰り返して来ている。実に単調な一日である。ああ、今これを記す間にも、文章を書く思考が纏まらない。どうも、しっくりと来ぬ。どうも、何かが気になる。「俺に作家が向いているのか?」そんな愚問(こと)さえ思う。これしか、この作家の業しか今の俺に無いというのに、何度目かの落胆と愚問である。俺はあの教会員と自分との事を書きたかったのだ。それと親と自分の事。特に父親と自分の立ち位置の違いについて等、又作家としての自分の在り方について等、思う処を書こうと思っていた。それらの事に纏わる色々を書いてみたかったのである。そうして、今置かれている「自分の孤独の立場」というものを又少々痛烈に吟味して、孤独の自分を慰める計画にあった。これも自慰であろう。この自慰計画は、起きて『夢日記原本』を記している最中(さなか)に起きた。しかし忘れて書けぬ。生(せい)の経過(ながれ)によって、忘れてしまう。何を書くにも根気が無い。作家にとって、実に厄介な事である。こういう頃(とき)もあるのだろうが、実に厄介である。


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『北の国から』を読んで

(二〇一五年一一月一五日《二時三五分》記)

 

 俺は今回、「北の国から」を観るより読む事にした。

以前、母が観ていたので俺もよく観ていたが、現在、もう一度見てみると、内容が浅くしつこく感じられ、自然主義に見た「人間の掘り出しの少なさ」を痛く感じた。それに「団扇盛り上がり」に倦怠に似た飽きを感じた。そして無闇に暗い。まるでこの「暗さ」が何らの終着(ゴル)のようにも見えていた。「なんでいっつもいっつもこんな風にボソボソボソボソボソボソボソボソ呟かせるのか」この暗さが逆に「好い加減」にさえ見えて来る。繰り返す「矢鱈の暗さ」がほとほと疑問であった。お決まりのようにやって来るその「暗さ」に苛ついた程である。「明るさ」を以て暗さを呈する、この法を採らぬのか詰り「興味深(おもしろ)くない」これが感想だった。上記により、表現が一定の枠を越えていない。「いや越えている」と言うなら、その「越える表現」への工夫が足りぬ。(俺にとってそうなる)。在った事をそのまま見せられているに過ぎぬ。その経過における人間の複雑を表現する際に充分がない。その「充分」を思う満足迄に余白が在る。未踏の「余白」である。足りぬのである。究極の点まで行かずとも、最初の数歩(でだし)で物足りないのだ。人物設定に生活歴を追い過ぎて、その点に緻密に成り過ぎて、その人間から成る表現を疎かにしたのか展開に無理が在る。既知はもうよい。創作をせよ。人間から成る未知への創作を成せ。俺が作品に見るのはこの点である。(故に記す)。「スケルが大きい事」は真実を描写せぬ。人間の複雑怪奇(しんじつ)を描写せぬ。「感動は真実に在る」その「真実」を創作に表せ。もう貴方の描写を見飽きているのだ。(こう言って貴方には痛くも痒くもなかろうが)。「大きな感動を与える仕掛けは小さいほどよい」。このドラマを読んでいて、どうもしっくり来なかった。どうしても、「人間を描写する点」で俺の満足に足りぬ。観ていたのは、可愛らしい女の子達が出て来る場面だけだった。あ、それともう一つ。八十年代という懐かしさと、その懐かしさの内で活きる家族意識の温和(サークル)である。しかし作家を述べる。その時のその人の表現は「その時のその人だけの物」である。倉本聰、彼が作家としてテレビに出たのは運に依る。故に、この言は『思記』(ここ)に留める。こういう事を、作家同士で問い合う必要は無い。聰よ、その内実姿勢を貫き通せ。勝手に言う。


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目次

1.     書くべき事

2.     作家の旅行・紀行

3.     O教会での仕事の為に

4.     理想

5.     書く時

6.     受賞の無価値

7.     落第人生

8.     由紀子

9.     執事

10.  妙な麻薬

11.  変人

12.  一平君

13.  男女に生れて来る別

14.  外国人への落胆

15.  造語の延長にて

16.  男と女

17.  回顧譚

18.  旧文壇

19.  女性の妙

20. 

21.  女の平静

22.  独立

23.  幾らでも

24.  感性

25.  罵言(ばげん)の保持

26.  文学の要らぬ

27.  本業について

28.  真面目不真面目

29.  父の永遠の見守り

30.  言葉の奥

31.  時代

32.  『北の国から』を読んで

33.  中島みゆきと森田童子

34.  俺の内に居る作家

35.  現代作品への一言

36.  あの人は駄目だ

37.  株式会社アマナ

38.  六歳までの性格基盤の形成

39.  自殺

40.  無題

41.  俚諺

42.  孤独と強靭

43.  大阪とエマニエル

44.  進理(しんり)

45.  落胆

46.  小泉今日子

47.  天川文庫文学の内容文体表記

48.  複雑怪奇な人のデ

49.  文壇否定

50.  向き

 


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