閉じる


お願いとお詫びにつきまして

本書は、2000年に上梓したものです。

その後、法制度の改正等により法律名の変更が(例:商法⇒会社法、証券取引

法⇒金融商品取引法など)あったものがあります。内容の変更をしておりません

ので、条文等を含めて適宜読み替えていただきたくお願い致しす。

その他、誤字脱字等があれば、お詫び申し上げます。


1
最終更新日 : 2010-10-17 23:23:18

目 次

「僕の仕事はソニースタイル」

 

 

目 次

 

  はしがき             

1.経営的思考や行動が必要な時代   

2.企業活動を俯瞰する        

3.企業活動の原点をみる       

4.私のソニースタイル        

5.入社早々採用担当者        

6.総務初仕事            

7.本社移転プロジェクト      

8.いきなり新卒採用活動       

9.突然グループ責任者        

10.41才経理新人デビュー     

11.新入社員と営業時代       

12.ソニー流事業の進め方      

13.部門の仕事を超える人間達    

14.コーポレート・ガバナンス    

15.ソニーとガバナンス       

16.ソニーと監査部門        

17.ベンチャー企業と人事的視点   

18.自由と自己責任         

19.ソニーにおける企業実務     

20.企業活動に必要な基本的な知識  

21.文書管理            

22.受取請求書と債務計上      

23.リース資産と固定資産      

24.契約と企業活動         

25.企業活動と保険         

26.企業と特殊暴力         

27.事業計画と管理会計       

28.目標設定の実務         

29.経理知識の必要性        

30.仕事とリスク          

31.企業活動を眺めて        

32.知識の根底に必要なもの     

33.ソニースピリッツを探す旅    

 

 

 


2
最終更新日 : 2010-10-18 08:23:29

はしがき

はしがき

 

  新入社員時代から約11年間営業の仕事をしてきた私は、こともあろうに36才にして総務・人事の仕事に挑戦しようと、世に言う常識はずれな転職を決意しました。それはバブル期の後半とはいえ、これまでまったく経験したことがない、いわばキャリアがない仕事をやろうとすることであり、当り前ですが無謀きわまりないものでした。

何故かといえば、簡単なことですが、転職そのものが企業で積み上げてきた個人の仕事におけるキャリアを売るということです。また、企業はそのキャリアを買うということだからです。

ある有名人材紹介企業のコンサルタントに転職アドバイスを受けた私は、転職の意味やこの国の転職事情、またキャリアに対する考え方に我を見失うような錯覚を覚えました。

「これはやばいことをやっているなぁ!」と。

今にして思えば、よく転職できたものです。ある面で奇跡に近い、もう一度やれといわれても二度とチャンスがないのではないか、と思います。

すべては、妻がもってきてくれた新聞求人広告がきっかけでした。

「ソニーシステムサービス株式会社、新規設立につき人事担当者求む」という募集広告からはじまりました。

筆記試験、二度の面接。

「これからの時代は現場を知っている人間が、管理部門の仕事をやるべきだ」という人事部長らしき人の話。入社後わかりましたが、なんとこの人、社長でした。入社1年後、この社長に「キャリアがないのによく採用していただけましたね」と尋ねると、社長曰く、東通工時代の採用ってのは、来てくれた人に「何がやりたいの」と尋ねて、総務といえば総務を、開発といえば開発を、と応募してきた人達がやりたいことをやってもらったんだよ、と。「本人がやりたいことをやらせるほうが、企業は伸びる」、また「ソニーはそうやって大きくなったんだ」と。さらに「東通工時代には、今のソニーのように人がきてくれなかった」と。

まさに私がやりたいことをやらせてくれた社長でした。今日、こうして私があるのもソニースピリッツとご自身の信念をもって採用してくださったからにほかなりません。

入社後もカルチャーショックの連続。徹底的な実戦形式の仕事、自分で考え、自分のやり方を作りあげ、自分で部門運営していくという見事なまでの権限委譲。その上事業計画の策定は部門の自主性を尊重して作成するという、本当にオープンなシステムを採用しています。他の企業の人が見ると「経営数字が、こんなに丸見えでいいのか」と思うことでしょう。

  本書は、私がソニーシステムサービス株式会社の立上げ業務を通じて経験したソニーにおける仕事のやり方、特に実戦を通して経営全般を理解させるという、ソニー流の仕事のやり方をなんらかの形で展開してみたいとの思いが強くあり、昨年6月よりメールマガジンを利用して大学生と新入社員向けに発刊していたところ、オーエス出版株式会社の米山弥太氏より執筆依頼をいただくという幸運に恵まれました。

米山氏は、昨今の数多いベンチャー企業の創設に伴い、企業の基礎的、あるいは基本的な仕事を見直す必要性があるのではないか、と考えておられました。一方、私は、企業活動の全体を理解することが、大学生あるいは新入社員にとって自分がおこなう仕事を捉える上からもより重要になる、との認識をもっていました。

このような観点からソニーの企業活動を参考にすることで、仕事の基本的な流れやどのような部門に配属されても、仕事をおこなう上で知っておかなければならい基本的な機能などをわかりやすく展開しようという試みです。

ベンチャー企業の社員、大学生、新入社員、あるいは企業の中堅社員の方達まで含めて、一度仕事の全般的な流れや必要とされる基本的な機能を勉強しようという皆様に、是非ご一読いただきたいと願っています。

最後に、本書を執筆するにあたりソニーシステムサービス株式会社元社長小林宏氏には、ソニーシステムサービス株式会社在職中はもとより退職後も公私にわたるご指導とお付合いをいただき、本書における数々の勉強をさせていただきました。この機会をお借りして改めて御礼申し上げる次第です。


3
最終更新日 : 2010-10-18 08:10:52

1.経営的思考や行動が必要な時代

1.経営的思考や行動が必要な時代

 

  21世紀を目前に経済環境の急激な変化に伴い、特に経済活動のグローバル化に伴う会計基準の見直し、時価会計、税効果会計の導入、連結決算制度の見直しと日本企業を取り巻く経営環境が大きく変化しており、新たな経営展開が急がれています。

  これからの企業人としてどのような視点が必要か、企業活動を担う社員としての行動力、組織対応能力、あるいは企業活動のコアとなる個人の人間性や知に関してなど、多くの要素が企業活動の中には存在します。また一方では、成果主義、実力主義の導入で、早晩、年齢に関係なく企業のそれぞれ部門において責任あるポジションを担うことになると考えられます。真に企業活動を支えるために求められる条件とは、一体なにか。仕事の実践とともに、益々多くの自己研鑚が求められることでしょう。

 

  私は、仕事の基本とは、複数の部門で成果を出すことができる基礎的能力の獲得、と定義しています。

 

  これまでの日本企業のキャリアは、一般的にはゼネラリストといわれ、専門性が欠如した企業内キャリアと考えられていました。

  私が見てきた範囲内で簡単に言わせていただければ、日本的なキャリアの実態とは40才前後で課長になる前のキャリアに関しては、どちらかと言えば企業内スペシャリストとして配属された部門における成果を常に求められていたようです。他方、管理職としての課長職は、前記配属部門の中で担当してきた仕事において実績を出しながら企業内評価を積み上げ、相応の年齢を加味されることで昇進してきたポジションではないか、と考えています。さらに管理職昇進後は、マネジメント主体の管理業務をおこなうという、いわゆるゼネラリストとして部下を指導・育成しながら部門目標の達成に努めるといった管理的業務を担ってきたのではないか、と考えています。

  このように日本企業の職務内容は、成果追求をおこなう業務と目標達成を管理する業務という二つの機能を活用しながら経営活動を支えてきたと考えられます。別な観点から見れば、一般職のスペシャリスト機能と管理職のゼネラリスト機能という二面性を前提に人材の活用をしてきたのではないでしょうか。

 

  21世紀の経営は、安定成長、場合によってはマイナス成長をも考慮した企業経営をおこなうことが課題となるでしょう。

  利益を出すことは、言うまでもなくいつの時代にあっても企業経営の根幹をなすものです。しかし今日の企業経営は、多様なお客様のニーズを満足させて、ニーズに対応できる製品の存在、個性的な製品群の開発能力、また高品質な製品や付加価値が認められるサービス、さらに変化に柔軟に対応できる生産技術の有・無、あるいはネットワーク機能を利用しながらお客様と緩やかなコミュニケーションをおこなうといった、創造的で、しかも連続して価値を生み出すことができる経営システムや経営能力が問われようとしています。

  マーケットに成長余力がある時代には、過去のリニアな前提の上に経営システムを構築すれば経営が可能な時代でした。しかしこれからの時代、21世紀は、各企業自らがマーケットを創造していかなければなりません。それは、これまでのシェアの競争からマーケティング本来の意味である『市場の創造』をおこなうことに他なりません。

  このような時代に組織機能に重点を置いた経営、他の言葉を借りれば合理性・機能性だけを追求する経営スタイルでは、お客様の真のニーズを発見することも企業価値を見出すことさえできない時代になるのではないか、と危惧しています。

個人や企業も経営活動に関する真摯な取り組みがない限り、新しい時代における本当の仕事の意味や意義を理解することが難しい時代になりそうです。マーケットを創造するためには、敢えて極端な言い方をすれば全社員が、経営者的視点でビジネスを捉えることが重要ではないか、と。起業的・創業的時代においては、すべての社員がマーケットを覗いたり、あるいはお客様と継続的なコミュニケーションをおこない、また家族や友人など多くの人達から間接的、直接的に知りうる情報の中にこそ真の価値が存在するのではないでしょうか。

企業の仕事もこれまでのように、部門という全体の中における部分機能の役割を担うことから常に変化を前提とした組織システムや組織機能の構築が必要になります。経済や市場、あるいは個人の変化が当り前の時代だからこそ、常に変化に適応できる体勢が要求されるのです。

このような時代の特徴とは、常に変化させることが、実は安定につながるのです。変化に合わせるのではなく、企業やそこで働く個人を変化させるところから、経済や市場の変化を掴まえるといってもいいでしょう。でなければ、何が変化なのか、その本質を把握することなどできるはずがないと思われるからです。

  マイクロソフト社前代表取締役  成毛 真氏は、人材育成に関して次のように語っておられます。

『人事的な面で言えば、当社では5年以上は同じ仕事を続けさせないんですよ。現在関わっている業務に天賦の才能があろうと、人間的繋がりがあろうと、関係なく変えていきます。これは、取引先との癒着を起こさないという問題ではなくて、そうしないと人が育たないと考えているからです。営業マンばかりつくっても仕方がなくて、マーケティングの部門に行って、また戻ってくると。そうすると、マーケティング感覚の身についた営業マンになる。その次に開発部門やサポート部門をやって、もう一度営業に戻す。だんだん付加価値が付いてきます。会社全体の戦力を上げるうえでは、一人一人の能力を向上させ

なければなりませんから、そのために5年で転部させるわけです』

*プレジデント1999年12月号より

 

  大前研一さん流には、『 So What?で考えられるか』と言ったところでしょうか。

『本当の問題は何か』ということを社長の立場で考えることができるかどうかだと書いておられます。

*サラリーマンサバイバルより

 

スペシャリストか、あるいはゼネラリストかを論じる時代は、とうに過ぎ去っているように思えてなりません。即ち経営的思考や行動ができるかどうかが、まさに問われようとしているのだ、と私は確信しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


4
最終更新日 : 2010-10-18 08:11:08

2.企業活動を俯瞰する

2.企業活動を俯瞰する

 

新入社員時代からの疑問

  私は、約22年間のサラリーマン時代を通して次の疑問をもつようになりました。

1.大学時代までの勉強と会社の仕事に必要な知識に乖離があるのではないか。

2.企業は、経営あるいは企業活動に必要な知識を理解させてこなかったのではな

    いか。

3.企業は、企業活動をサポートしている機能とそれらを活用する意味を理解させてこなかったのではないか。

 

別な視点で捉えれば、(1)学問的視点から実務的視点への切換えが必要(2)企業活動を俯瞰する知識や考え方の醸成が必要(3)企業における収益をあげるという外部的な機能と企業内で収益部門を支えるという管理的あるいは内部的機能を理解する必要性がある、といったことになるでしょうか。

 

  実は、私自身は卒業してから右肩あがりに直線的に仕事の能力ができあがり、その上自分自身の成長もこのように直線的に成長が可能だと、信じていました。

(図1参照)

  しかし現実の仕事は、想像を絶するギャップの連続で、逃げ出したいほどのショックでした。今思い返えせば、会社の仕事をすることとは、なるほど経験したことがないことばかりなのですからできなことのほうが当然と言えば当然なのですが、当時は卒業して自信満々ですから手におえません。

結論から言わせてもらえば、また約22年間のサラリーマン経験から言わせていただければ、これからベンチャー企業を立ち上げるみなさんや新入社員のみなさん達にとって企業の仕事を考える上で、必ず学ぶべきポイントが厳然と存在しています。

 

 

 

 

 

 

 


5
最終更新日 : 2010-10-18 08:24:57


読者登録

長野修二さんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について