目次

閉じる


 

むかしむかし、カラフル王国という国がありました。

 

 みんな、いろんな色が大すきで、同じ色がすきな人たちが集まって、赤の村、青の村、緑の村など、いろんな村に住んでいました。

 

 そして、どの村の人たちも、絵をかくことが大すきでした。

 

 青の村の人たちが、お絵かきで山をかきたいときは、緑の村で緑色をかりました。

 

 緑の村の人たちが、お絵かきで赤い花をかきたいときは、赤の村で赤色をかりました。

 

 そうやって、みんな仲良く暮らしていました。

 

 

 

 そんなある日、いちばん人数の多い、赤の村の村長は考えました。

 

「赤の村の人数がいちばん多いのじゃから、カラフル王国でいちばんえらいのは赤の村じゃ。」

 

 村長はさっそく村民たちに言いました。

 

「赤色がいちばんえらいのじゃ。太陽をかく時、みな赤色でかくではないか。太陽のように、われわれの力で、カラフル王国を支配しようではないか。」

 

 村民たちは「そうだ!」と思いました。

 

 

 

 それを聞いた黄の村の人たちは怒りだしました。

 

「太陽が赤色だって?太陽は黄色に決まっているじゃないか!人数は少なくても、いちばんえらいのは黄の村に決まっている!」

 

 赤の村と黄の村はケンカになりました。

 

 赤の村の村民たちは、黄の村にせめこみ、手当たりしだいに赤色をぬっていきました。そして言いました。

 

「赤くぬってあるところは、黄の村の村民は使ってはいかん!」

 

 人数の少ない黄の村の人たちはどうすることもできず、おこって言いました。

 

「今後、赤の村には絶対に黄色をかさない!」

 

 

 

 そのケンカのようすを聞いた他の色の村民たちは思いました。

 

「太陽がかがやく空は青色がないとかけない。だからわれわれ青の村がいちばんえらいに決まっている!」

 

「いや、その空に浮かぶ雲は白がないとかけないだろう!われわれ白の村だって、ないがしろにはできないのだ!」

 

 こうして、村と村の間にはケンカが絶えなくなり、みんな仲が悪くなってしまいました。

 

 そして、絵をかくときに、他の村から色をかりることもなくなったのでした。

 

 

 

 そのケンカから20年後のある日、赤の村の小さな女の子、マーシャがお絵かきをしていました。お絵かきは、赤色だけでかくのが当たり前でした。

 

でも雨上がりのその日、空にあらわれたきれいな虹を見て、マーシャはそれをかこうとしましたが、赤色だけではどうしてもかけません。マーシャは泣き出しました。

 

「ママ、あのおそらのにじが、かきたいよう!」

 

 マーシャのお母さんは、その時、ハッと思い出しました。子どものころ、いろんな村に色をかりに行って、楽しく虹をかいたことを。そして、泣いているマーシャを見て思いました。

 

「こんな世界はおかしいわ!」

 

 マーシャのお母さんは、さっそく、ほかのお母さんたちによびかけました。

 

「楽しく虹の描けるカラフル王国をとりもどそう!」

 

 ほかのお母さんたちも、立ち上がりました。このよびかけは、赤の村をとびこえて、ほかの村のお母さんたちにもとどきました。

 

 お母さんたちはプラカードをかかげて、必死で行進をしました。

 

「仲の良い王国をとりもどそう!」

 

「子どもたちが虹をかける王国をとりもどそう!」

 

 

 

この声は、各村の村長さんたちにとどきました。そして、村長さんたちの話し合いがもたれることになりました。

 

まわりではお母さんたちが見守っています。でも

 

「赤がいちばんえらいんじゃ!

 

「なんだと、青色がないと、雨のひとつぶもかけないじゃないか!」

 

「それを言うなら、緑がなけりゃ、葉っぱの1枚もかけないぞ!」

 

 話し合いは、どなり合いになってしまいました。

 

 

 

 そばで、祈るような思いで話し合いを見守っていたマーシャのお母さんは言いました。

 

「色の違いばかり言っていても、何もまとまりません。どの色の村人にも共通のことを出し合おうじゃありませんか。」

 

「共通のこと?」

 

 村長さんたちは、こまってしまいました。

 

 すると、黒の村のタックという男の子のお母さんが言いました。

 

「まず、みんな、色が好きですわ!」

 

 つづいて、紫の村のメリーという女の子のお母さんが言いました。

 

「そう、そして、みんな、絵をかくことが好きよ!」

 

 お母さんたちは、つぎつぎと、みんなに共通なことを発表しました。

 

 そして、最後にマーシャのお母さんが言いました。

 

「子どもたちが自由にお絵かきができる平和な世界をのぞんでいる、という気持ちは、どの色の村人もみんな同じですわ!」

 

 それを聞いた村長さんたちは、何も言えなくなりました。

 

 

 

 すると、赤の村の村長さんが口を開きました。

 

「わしがまちがっておった。人数が一番多いし、太陽の色だから、わしたちがいちばんえらいと思っておったが、そうじゃなかった。わしたちだけでは何もできぬ。今までぬった赤色は、もとにもどすから、どうか、ほかの村のみなに仲良くしてほしい。」

 

 それを聞いたほかの村の村長さんたちも、次々と言いました。

 

「売り言葉に買い言葉だった。やっぱり、いろんな色で絵がかきたい。」

 

「そうだ、いろんな色が輝いてこそ、カラフル王国だ。」

 

 村長さんたちも、まわりで聞いていたお母さんたちも、みんな笑顔になりました。

 

 

 

 それから、カラフル王国のみんなは、元のように、いえ、元以上に仲良くなりました。

 

 ケンカのときに投げ合った色がまざったとき、さらにすてきな色になることに気づいたからです。

 

 おたがいの良さをみとめあい、さらに、おたがいを受け入れて、みんな、さらにすてきな絵がかけるようになったのでした。


この本の内容は以上です。


読者登録

haruさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について