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和泉隊の正体!?

5時を示す、チャイムが本部に響き渡る。

※サンが失神させてしまった男の人はセイレン警察に連行されました。

「もうそろそろ帰んないとね・・・」

夢乃がそっと声に出す。サンにキレて、上に上がってしまったスーはまだ下りてこない。

花帆と千花は寂しそうに階段を見つめた。サンはそれを見て、

「スー!下りてこーい!先輩達、帰っちまうぞー!」

と階段に叫んだ。アールはちょっと!と言ってサンの口を慌てて押さえる。

すると、階段から・・・

「うっさい!今行くから!言わなくていい!」

と階段を下りてくる音と共に、スーの声が聞こえた。スーは下りてきて、早々、バンッ!と机の上に何かを置いた。それは緑色,赤色,黄色,青色のカードだった。それぞれ2枚ずつあるカードには花帆達の名前が書いてあった。どうやらこれはここに入る為のカードらしい。

「こ・・・このカードって・・・もしかしてこの区域に入る為のカード・・・?今まで作ってくれてたの?」

アールに言われ図星だったのか、スーは顔を赤くしてそっぽを向いた。

花帆達が自分の名前が書かれたカードを取っていった。

「この色・・・もしかして師匠のネクタイの色じゃ・・・!」

千花に言われ、花帆達は自分のカードの色を確認する。

見てみると、花帆と千花は青色のカード,夢乃と和奏は緑色のカード,朱夏と菜月は赤色のカード,そして叶芽と美咲のカードは黄色だった。

「ちゃんと・・・聞いてたんだ・・・」

「う・・・うるさい!!」

アールに言われ、また顔を赤くするスー。スーの優しさに思わずクスッと笑うアール。

和泉隊は本当に仲が良いのだろう。

「そういや、練習どうする?和泉隊、いつ空いてるんだ?」

「土曜,日曜なら・・・。平日は学校がありますし・・・」

大倉の質問にイーが答える。どうやら和泉隊もちゃんと学校に行っているらしい。

「部活はどうすんだ?お前ら全員部活入ってんだろ?土日の部活ねーの?」

「俺、サッカー部、月,金だけって決まってるし、柔道部も行きたい時でいいって言われてるし」

どうやらサンは、サッカー部と柔道部の掛け持ちらしい。

「ウチは、空手部週一だからね~。しかも火曜日だし」

スーは頭の後ろで手を組みながら言った。まだ口には棒つきアメをくわえている。

「僕達の卓球部、緩いから行かなくても別に怒られないし・・・」

「確かに、俺なんて月,火,金しか行ってないもんな」

イーとウーは顔を見合わせて笑っている。2人とも卓球部なのだろう。

「私の弓道部、土日はないもんな~。ていうか、セイレンの武器に弓ってないわけ!?」

「え、作って欲しいなら言ってくれれば良かったのに~。今から作ろうか?」

「作れるんなら言ってよ!お願い!作って!」

「あいあい、後で上来て。そん時、どうゆう武器にするのか聞くから」

 アールは弓道部らしい。確かに凛とした顔立ちは、弓道に合う。

「ありがとー♪流石、天才スーちゃん♪」

「ったく、こんな時だけ調子いいんだから・・・」

スーも機嫌が戻ったらしく、甘えん坊になったアールに呆れている。

アールの意外な一面を見た花帆達は、驚いている。

「そういえば、スー、女子野球部は?土日あるだろ」

「みんな弱すぎてつまんない。だって、ウチの球、みんな取れないんだもん」

「でも、お前らの学校、県大会優勝してるんだろ?あと、お前キャッチャーだろ」

「ピッチャーの球が遅すぎて笑い堪えちゃった。しかもセカンドの人、ウチの球怖がって取ろうともしないんだもん。これじゃ、盗塁されまくりだよ」

大倉の言葉に花帆達が反応する。それもそうだ。なんせ、今年、県大会で優勝したのは花帆達の学校の野球部だったからだ。千花はこれまでの会話を振り返る・・・。

 名前も、学年も言っていないのに和泉隊は「先輩」と言っていた。

スーに関しては、名前入りのカードも作ってくれている。

「もしかして・・・師匠達って、私らの後輩なんじゃ・・・」

千花の言葉にみんながビックリする。和泉隊は全員下を向いている。

どうやら、千花の言う通りなのだろう。

「じゃあ、やっぱりこの写真って師匠達なの?」

そう和奏に言われ、和泉隊はバッと顔を上げた。その写真を見て、和泉隊は青ざめている。

そこには、仲が良さそうな5人が写っていた。

1番左の白色の髪で、横髪だけが緑色の八重歯が特徴的の女の子はダブルピースをしており、

左から2番目の赤色の髪の毛の女の子は右手だけピースをしていた。

真ん中の優しそうな男の子は、赤色の髪の女子についていたクリームを人差し指で取っていた。

右から2番目のチャラそうな男子は、1番右の男子の首を腕で引き寄せ、親指,人差し指,中指を立ててこめかみに当てていた。おそらく銃のまねをしているのだろう。

1番右の男子は、驚いたように右手をパーにし、転けないようにバランスをとっていた。

花帆達も写真を見て驚いた。何故なら、全員、花帆達の知っている人物だったからだ。

花帆達はパッと見ただけで、誰が誰だか分かった。

1番左の八重歯が特徴的な女子はスー。

左から2番目の赤色の髪の女子はアール。

真ん中の優しそうな男の子はイー。

右から2番目のチャラそうな男子はサン。

1番右のこけかけている男子はウー。

スーの八重歯はアメをくわえていたため見えなかったが、今は歯を食いしばっているため良く見える。

和泉隊は何も言わず、バジュンと変身を解いた。

隊員服ではなく、私服に戻った和泉隊は、写真に写っていた人と全く同じだった。

スーの髪も黒色から白色に変わっている。横髪だけが緑色になっている。

アールの髪も、黒色からキレイな赤色の髪になっている。

黒色だった、サンとウーの髪も、お揃いの茶色の髪に変わっていた。

イーだけが髪の色が変わっていなかったが、髪が少し短くなって、かっこ良くなった。

「師匠って・・・緒方涼華ちゃんだったんだね・・・」

そう言われ、変身を解いてからずっと下を向いていたスーが顔を上げる。

その目は横髪と同じキレイな緑色だった。

写真も、暗くて良く目の色は見えなかったし、あまり学校でも見なかったため、花帆と千花は初めてスー改め、涼華の目をしっかり見た。キラキラと光る緑色の目から花帆と千花は目を逸らせなかった。引き込まれるようにずっと緑色の目を見ていた。

フッと涼華が、目を逸らした。

「おかしいですよね・・・後輩が師匠なんて・・・。それに、この髪や目も・・・これ、いっつも髪染めてるだの、カラコン入れてるだの言われるんです・・・。生まれつきなのに」

涼華が淡々と話す。花帆は、涼華の肩をガシッと掴んで、

「そんな事ない!そんな事ないよ!師匠が年下の涼華ちゃんだからって関係ない!私が憧れたのは、スーさんなんだから!それに、目や髪もおかしくない・・・。とてもキレイじゃん」

と言った。花帆の言葉に涼華はクスッと笑った。

「ありがとうございます。・・・ウチら、今まで一回も弟子取ったことないんですよ。でも、周りのみんなは弟子を取ったり、教えたりしてるんです。このままじゃ、ウチらは成長出来ないと思った時に先輩達が来たんです。このチャンスは逃さないようにということで、先輩達を受け入れました。でも、一回も教えた事がないんです・・・。なので・・・教えるのヘタッピですけど、良いですか・・・?」

 千花は首を振った。

「弟子になれただけでも嬉しいよ!別に教えてもらわなくてもいい!見とくだけで勉強になるから!」

「それもどうかと・・・。出来る限りの事はします。これからもお願いします」

そう言うと、涼華は深々と頭を下げた。それに慌てて花帆と千花も頭を下げる。

その後、涼華と花帆と千花は目を見合わせて子供のようにニコッと笑った。

一方、サンはずっと体育座りをして壁に向かって何か言っている。正体をバレたのがよほどショックだったのだろう。叶芽や美咲の顔を見ようともしない。

「師匠の名前って、岩切颯太君・・・だよね?」

叶芽が中腰の状態で話しかける。颯太は名前を呼ばれ顔を上げたが、また下を向いた。

「そうですよ・・・。嫌ッスよね・・・。年下の俺が師匠なんて・・・。やっぱり師匠の件・・・諦めてくれません・・・「それは違うと思う」

颯太の言葉を阻む形で美咲が言う。話を途中で切られた颯太は、キョトンと美咲を見つめる。

「教えるのに年下も年上も関係ないと思う。実力が上の人から教えてもらう・・・それが普通なんじゃないかな?私は颯太君に教えてもらいたい。私、エンペラーで颯太君が出来ないポジションだけど、私なりに色々とやってみるつもり。迷惑かけるけどそれでも弟子にしてくれますか?」

颯太は一時目をパチクリさせていたが、内容を理解したのかクスッと笑うと、立ち上がり、叶芽と美咲の方をしっかりと見た。

「こんな俺でも良いですか?」

「うん、颯太君じゃないとイヤだ。これからもよろしくね」

颯太と美咲は顔を見合わせて笑った。颯太のニコッとした笑顔は小学生のような無邪気な笑顔だった。いたずらっ子のような眩しい笑顔だった。

一方、イーはソファーに座りこんでいた。ずっと下を向いたままで、顔を上げようともしない。和奏は写真をテレビの横に戻していた。ずっとそこに置いていたのだろう。そこだけ埃を被っていなかった。

「その写真、見られると思ってませんでした・・・。勘違いしないでください。僕達は、先輩達を騙すつもりではありませんでした。弟子の件・・・やっぱ諦めてください。その代わり、師匠になってくれる人を探しますので・・・」

「それは無理。私は、和泉晴輝君を師匠にするまで諦めないから」

イーこと、和泉晴輝は夢乃の言葉に驚き、顔をバッと上げる。いきなり顔を上げた、晴輝を見て、夢乃はそっぽを向いた。

「ぼ・・・僕でもいいんですか・・・?」

「何回も言わせないでよ」

伺うような目で見てくる晴輝を横目で見ながら、恥ずかしそうに腕を組み、顔を赤くした。

和奏は、ニシシと笑いながら夢乃と晴輝を見守っていた。

一方、アールはぶつぶつと"私は悪くない"と呟いていた。ちなみに、アールも"先輩"とボロを出している。別にアールが悪くない訳ではない。最終的にボロを出したのは涼華と大倉なだけで、和泉隊はウー以外、正体をバラすような事を言っている。

「林藤柊理ちゃん・・・だよね?これからもよろしくね?」

朱夏が小学生に話しかけるように優しく声をかけた。柊理は、ゆっくりと顔を上げ、菜月と朱夏を見つめた。その目はルビーのように赤く輝いていた。

「わ・・・私で良ければよろしくお願いします」

そう言うと、柊理はおずおずと頭を下げる。それに合わせて菜月と朱夏も慌てて頭を下げる。

 今まで普通に喋っていたのに急によそよそしくなったのがおかしかったのか、3人は顔を上げると笑い出した。

「そういえば、ウー君って菊山康一君だよね?」

と千花が振り返り、ウーこと、康一に言った。

「な・・・何で知ってるんですか・・・?」

「だって、康一君生徒会の人だから・・・。生徒会でいつも会うし・・・」

康一は生徒会だ。そして、千花も生徒会で全校生活委員会の委員長だ。千花は立候補ではなく、先生からの推薦でなったらしい。ちなみに、朱夏は生徒会副会長である。

「晴輝君は全校学習委員会の副委員長だし、柊理ちゃんは弓道部にめちゃくちゃ強い一年生として有名だし、颯太君はサッカー部でも柔道部でも有名だから・・・」

どうやら和泉隊は有名らしい。一学年5クラスもある学校で花帆達全員が知っているという事はかなり有名なのだろう。

「涼華ちゃんは、南(女子野球部のキャプテンでありエースでもある花帆達のクラスメイト)が言ってたんだけど、"私のピッチング見て笑ってきた"ってキレてたから・・・」

「あ・・・あれバレてたんですね・・・」

やっちまったとばかりの顔で涼華は頭を掻きながら言った。

「でも南のピッチングって県内でもトップクラスでしょ?そんなに遅い訳じゃないよね?」

「確かに・・・遅い訳じゃないし、いいピッチングなんですけど・・・ウチのバッテリーの相方がめちゃくちゃ強かったので・・・」

「でも、強かったってその子が強かっただけで涼華ちゃんが強かった訳じゃないよね?涼華ちゃんより南の方が強い気がする。涼華ちゃんに南以上のピッチングが出来るの!?」

花帆に責められ、怖じ気づく涼華。よほど恐かったのか涼華は一歩下がる。言い過ぎたと言った後に気付いたのか花帆も一歩下がる。辺りがまたシーンとなる。


和泉隊の兄弟達

辺りがシーンとする中、玄関からピーンポーンとチャイムが鳴った。晴輝が開けると、そこには3人の少年がいた。それを見て、花帆達は驚く。何故なら、その少年達は花帆達のクラスメイトだったからだ。花帆達を見た少年達も驚いている。

「な・・・何で花帆達がいるんだよ・・・」

白い髪の少年が言った。涼華と同じようなキレイな白髪で、目は薄い水色だった。パッと見、日本人では無さそうだが本人曰く、両親とも日本人らしい。両祖父母も日本人で、外国人の血は流れていないらしい。

「高広と颯也と真一・・・アンタ達こそ何で・・・」

「いや、だって俺らそいつの兄だし」

3人が一語一句間違えず、ハモり、一斉に指を指した。向けられた先にはそれぞれ颯太、涼華、康一がいた。

 誰も知らなかったのか、花帆達は声を揃えて叫んだ。

「えーっと、まず高広と涼華ちゃんって兄弟だったの・・・?」

これは花帆以外知っていたのかみんな花帆を見る。知らなかったのは1人だけと知った花帆は驚いたように辺りを見渡す。

「あれ・・・?みんな知ってた感じ・・・?」

「いや、髪の毛の色見ればわかるでしょ・・・。あと緒方だし・・・」

菜月が知らなかったの?という引いたような顔で花帆を見る。

「真一と康一君が兄弟なのは知ってた。一が2人とも付いてるし」

これもみんな知っていたらしく、頷きながら夢乃の話を聞く。真一も康一もマジメな性格で、髪の毛が茶色だった。誰も知らなかったのは、颯太と颯也が兄弟だということだ。確かに、言われて見れば髪の毛が茶色で、チャラい。それに2人ともサッカー部だ。"颯"という漢字も付いている。

「2人とも似てないから知らなかった・・・」

確かに、2人とも顔は似てないし、身長も同じくらいだ。誰も2人を見て、兄弟と思う人はいないだろう。

「そういえば、真一と颯也って従兄弟だよね?やっぱり康一君と颯太君も従兄弟なの?」

和奏はバカなのだろう。当たり前の事を言っている。それにため息をつきながら夢乃が"当たり前じゃん"と答える。"そっかー"と笑いながら言う和奏に呆れた夢乃はまたため息をつく。

「高広ってお兄ちゃんだったんだ~。高広、いかにも末っ子って感じだったから」

「酷くね!?俺、これでも妹2人いるから!!」

高広の意外な一言に花帆達はまた叫ぶ。うるさかったのか、和泉隊と兄組は耳を押さえる。

「うるせー!別に良いじゃねーか!」

「ってことは・・・涼華ちゃん以外にもう1人いるって事だよね・・・?」

花帆はまだ疑ってるらしい。怪しそうに高広を見つめる。

「あ~も~!そんなに疑うなら涼華に聞け!俺の妹は双子だ!」

「双子~~~~~~~!」

また花帆達が叫び出す。これで3回目だ。

「ほ・・・本当なの・・・?涼華ちゃん・・・」

「本当ですよ。ウチ、双子です。二卵性だから全く似てませんけど・・・」

 そう言うと、涼華はスマホを取り出し、操作し始めた。

「小学校も中学校も別々なので知らないと思います。ですが、今の燭峠(そくとうげ)中学の女子がウザイらしくて、来週からウチらの学校に転校してきます」

「そ・・・燭峠!?」

花帆達が口を揃えて驚く。それもそうだ。燭峠とは全国でも有名な進学校で、頭が良く、お金持ちじゃないと通えないような学校だ。

「これが静華の写真です。笑っちゃうほど似てないんですよね」

涼華はスマホを花帆達に見せた。花帆達がスマホを覗きこむ。そこには、黒髪のカワイイ大人しそうな女の子がいた。涼華が言っていたように全く似ていない。

「へー、カワイイね。涼華ちゃんのお姉ちゃん」

「え!?」

花帆の言った言葉に分かりやすく落ち込む涼華。何をしたか分からない花帆は"あれ?"と驚いている。そんな花帆と涼華を見て、高広はため息をつく。

「静華は妹の方だ。涼華の方が姉だ」

「ご・・・ごめん・・・知らなくて・・・」

「別にいいですよ。双子ですし・・・」

とか言いながら分かりやすく落ち込んでいる。

「そういえばさぁー、涼華ちゃんって南のピッチングを見て笑ったらしんだけど」

いきなり花帆が話を戻した。涼華は反省しているのかずっと下を向いている。花帆は涼華を見たにも関わらず、高広の方を向いて話を続ける。

「南のピッチングを見て笑っていいほど実力があるの?」

 花帆は南のピッチングを見て笑った涼華が許せないのだろう。涼華を鋭い目で見る。そんな花帆と涼華を見て、高広はため息をついた。

「涼華、人のピッチングを見て笑ったらダメだろ。ちゃんと謝りに行ってこい」

そう高広が言うと、涼華は小さく頷く。

「でも・・・花帆も涼華に謝れ。実力がないなんて言うな。"緒方姉妹"って調べてみろ。野球してる奴なら皆知ってるさ。涼華がどんな奴か知ったら謝れ!」

高広は大声をあげた。あまり怒らないタイプの高広が怒ったので、花帆達は驚く。その怒った姿はキレた時の涼華にそっくりだった。花帆の代わりに千花がスマホを見る。高広は冷めた目で千花を見る。千花はスマホで"緒方姉妹"を検索する。

「緒方姉妹・・・。小学生全国大会で3連覇を成し遂げたバッテリーである。妹がピッチャーで、姉がキャッチャーという双子のバッテリーで、その腕前は郡を抜いていた。また、バッターとしても優れており、妹は打順1番、姉は打順4番であった。私立の野球部のある学校の全校からスポーツ推薦が来たという噂もある」

千花が長々と読み上げる。千花の話を聞いた花帆は顔を青くする。

「言っておくが、それに書いてあるやつは全部本当だ。ちなみに涼華はピッチャー2番手で5つの変化球を投げる事が出来るプロ並みの腕前だ。だが、小学生は変化球投げちゃいけないから全部速球で投げてたよ。実力がない訳じゃない。これで分かったろ」

高広は言い捨てると、くるっと回り、涼華の方へ行った。

「涼華なら、人に笑われる辛さ・・・知ってんだろ?笑われたらどんな気持ちになるか分かってるはずだろ?じゃあ、やるなよ。やられたらやり返すんじゃなくて、同じ事をやらないようにするんだよ。いいな?」

高広の言葉に涼華は無言で頷く。高広はポンポンと涼華の頭を撫でた。

 「ごめん・・・実力がないなんて言っちゃって・・・」

花帆は下を向いたまま、涼華に謝った。

「いえ・・・実力がないのは本当なので・・・。ウチも南先輩に謝りに行きます」

そう言うと涼華はまた上に上がっていった。花帆が寂しそうに上っていく涼華を見つめる。

「そろそろ帰んねーとヤバイんじゃね?暗くなるでしょ?訓練は土日で良いんだよな?地下・・・確か空いてたよな?土曜日泊まれば?」

大倉が話をしだす。悪い雰囲気を取り戻そうとしてくれたのだろう。

「別にいいですけど・・・先輩達によります」

大倉の提案に晴輝が答える。

「親に相談します。来週から来ても良いの?」

「別に僕達は大丈夫ですよ」

「じゃあ決定な」

夢乃と晴輝と大倉の3人で勝手に話が進められており、他の人達は話に付いていけず、ポカーンとしていた。それでも3人は話を続ける。

「もう、暗くなったな・・・。送ってくよ。俺ら車だし・・・」

高広の言葉に花帆達は嬉しがる。よほど帰るのがめんどくさかったのだろう。高広達は迎えを呼んでいるのか、電話をかけている。

「もう着いてるらしい。さっさと行くぞ」

「では、先輩・・・お気をつけて・・・」

晴輝は礼儀正しく頭を下げた。それに合わせて柊理や颯太、康一が頭を下げる。

「じゃあまた来週よろしくね」

花帆達は夢乃に合わせて頭を下げた。

高広がドアを開けると、そこにはキレイな星空が広がっていた。

「涼華ちゃんもこの星空見てるかなぁ?」

花帆は誰にも聞こえないような小さな声で呟いた。


涼華の生き甲斐

花帆達が帰った後、柊理は涼華の部屋に向いていた。

「すーちゃん(涼華のあだ名)?入るよ?」

柊理は涼華の部屋のドアノブを回した。ドアを開けると、椅子にもたれ掛かった涼華がいた。何かしてる訳でもなく、ただ上を向いていた。

「柊理・・・ウチらって何で生きるのかな?」

いきなり話しかけられた柊理は何も言えず、涼華を見つめていた。

「人間って本当にクズだよね。欲望で溢れた惨めな生き物じゃん?何で人間って感情を持っちゃったのかな?感情さえ無ければ皆平和に生きていけるのに・・・。何で人間って競争するのかな?皆が協力すれば争いなんて起こることないのに・・・。何で人間って生まれてきちゃったのかな?地球問題とか生物が絶滅する事が無かったのにさ・・・。あらゆる問題ってほとんど人間のせいなんだよ。猪が町に下りてきちゃうのも、人間が山を奪ったから。地球温暖化も、人間のせい。自然災害以外、ほとんど人間のせいなんだよ」

涼華の言葉に柊理は何も言い返せなかった。ただ、淡々と話す涼華を見つめていた。

「ウチらって何で生きてんの?誰かに生きろって言われたから?好きな人がいるから?食べたいものがあるから?やりたい事があるから?今後の世界が見たいから?今が楽しいから?自殺が恐いから?友達と遊びたいから?見たい映画があるから?・・・そんな事で皆生きてるの?」

「っ!?」

涼華の言葉に、柊理は少し反応した。涼華の目は、生き甲斐を無くした死人のような輝きのない目だった。人間を、この世界を見くびったような目だった。

「人間は不純な動機で生きてるんだよ。生きる姿が哀れかもしれない。無様でカッコ悪いかもしれない。でも、頑張って生きてるだよ。頑張って生きてる姿ってカッコいいよ。すーちゃんも、ここまで生きてきたんだから、最後まで生きてみようよ。私だって不純な動機で生きてるよ。はる君(晴輝のあだ名)が好きで一緒にいたいし、和泉隊の皆とも一緒にいたい。それだけでいきてるんだよ。すーちゃんも、考えてみてよ。不純な動機でもいいから、一緒に生きよ?」

涼華は一時柊理の顔を見つめていたが、クスッと笑うと、

「そうだね。案外人間も悪くないね。ウチも頑張って生きてみるよ。動機は・・・静華を一人にさせたくない事と・・・まだ和泉隊の皆と一緒にいたいから。こんな動機で生きる理由になるんだね」

 と言った。柊理もクスッと笑って、

「そうだね。でもそろそろ人権問題になるからやめよ?」

と言った。柊理と涼し華は窓から外を見た。

「うわ・・・クソ星キレーじゃん」

「うん、すーちゃんクソはやめよー?」

 

 

*****************************************

 

 

花帆達は運部隊専用住宅街の道路を歩いていた。街灯が至るところにあり、とても明るかった。 

「ねぇ、高広。さっき涼華ちゃんに言ってた事ってどういう意味?」

何の事だか分からない高広はキョトンとして、花帆を見つめる。

「ほら、"涼華なら笑われて嫌な気持ち解るだろ"っていうやつ・・・。あれどういう意味?」

花帆に言われ、何の事か解った高広は、困ったような顔をして、"あぁ~"と小さく言っていた。

「知らねーのか?和泉隊って全員いじめられっ子なんだぜ?涼華や柊理、颯太や康一なんかは髪の毛があの色だし、晴輝はああゆう性格だから小学生の頃虐められていたんだ。涼華なんて"学校に行きたくない!"って朝、泣きながら学校行った事もあった。いつしか涼華は感情を表さない無表情の子になっちまったんだ。和泉隊は、いじめられっ子が集まった集団なんだ」

「そう・・・なん・・・だ・・・・」

元々いじめられっ子には見えないような和泉隊が、全員いじめられっ子と知った花帆は、ただその一言しか言えなかった。

「特に涼華と柊理が虐められていたな・・・。今からは想像出来ないだろうけど、暴力とかも受けていたらしい。小2の頃、涼華が泣きながら帰ってきたとき以来、涼華は泣いてないんだ・・・。柊理も、小3以来泣いてないらしい。涼華が空手を習い始めたのはいじめっ子から身を守る為。柊理も身を守る為に合気道を習っていた。それぞれが大会で優勝した時から、いじめはピタッと止まったよ」

意外な2人が主ないじめられっ子と知った花帆達は驚いている。今や、和泉隊のダブルエースとも言われているような強い2人がいじめられっ子だったなんて想像もつかないだろう。

「和泉隊はいじめられていたのもあって、人を信じようとしないんだ。和泉隊は自分のチームメイトしか信じていない。ちょっとした事でも人を疑う癖がある。だから、慎重に接しないと追い出されるぞ」

「颯太も、一時人間恐怖症だった。今ではだいぶ治ってきたが、いじめられてた頃は本当に酷かったよ。誰かが近付く度に怯えて、触ろうとすると反射的に手を避けたり、払ったりしていたんだ。今からじゃ想像もつかないだろ?」

高広に続いて颯也が口角を上げ言ったが、その顔は引きつっていた。颯也だって颯太の兄だ。颯太が心配なのだろう。笑顔はとてもぎこちなかった。

「涼華ちゃんも大変だったんだね・・・」

「あぁ、アイツはよくここまで生きてきたよ。何回か自殺仕掛けた事もあったけど、よくいじめを耐えたよ。本当にいじめを耐えた和泉隊はスゲーよ。多分俺は無理だから・・・」

そう言って、高広は後ろを見た。見ていた先には小さくなった和泉隊の基地が見える。

「うん、今まで耐えてきてくれてありがとう、涼華ちゃん。これからもよろしくね」

涼華には絶対聞こえないような小さな声でソッと花帆は言った。下から2番目の真ん中の窓には、椅子にもたれ掛かった少女のシルエットが映し出されていた。


登場人物

<和泉隊>

和泉 晴輝(いずみ はるき)···和泉隊隊長の通称イー。とても優しい。

林藤 柊理(りんどう しゅうり)···和泉隊副隊長の通称アール。合気道2段。

岩切 颯太(いわきり ふうた)···和泉隊順列3番の通称サン。チャラい。柔道初段。

緒方 涼華(おがた すずか)···和泉隊順列4番の通称スー。表情少な目。空手2段。

菊山 康一(きくやま こういち)···和泉隊チューナーの通称ウー。とても真面目。

 

<和泉隊兄弟>

緒方 高広(おがた たかひろ)···涼華の兄。妹思いのいいお兄さん。

岩切 颯也(いわきり そうや)···颯太の兄。弟同様チャラい。

菊山 真一(きくやま しんいち)···康一の兄。弟同様とても真面目。

緒方 静華(おがた しずか)···涼華の双子の妹。涼華とは全く似ていない。

 

<その他>←少し可哀想

十六夜 南(いざよい みなみ)···花帆のクラスメイト。女子野球部キャプテン。

 

<謎の設定>

・涼華は高広,静華の他に、高一の兄と大学1年生の姉がいる。

・晴輝には一卵性のそっくりな弟がいる。また、高一の姉もいる。

・柊理の姉と兄は2人とも高一で、二卵性の双子である。

・颯太の弟はまだ3才である。

・康一の妹は年子の小6である。

・千花には高一の姉と小4の弟がいる。

・花帆は一人っ子。また、お母さんの作った酢豚が好き。

・美咲の兄はヤンキーである。

・涼華と颯太は好き嫌いが激しい。

・柊理は家事は出来るが、料理が絶望的に出来ない。得意料理はスクランブルエッグ。

・いつも、和泉隊の料理は康一が作る。ちなみに康一は将来コック志望。

 

 

<コメント>

どうも初めまして青狸です。

漢字が分からなくて、ほとんど間違えてると思います。

パブーも9月で終わりという事で、9月までに終わる気がしません!

続きは他の所で書きたいと思います。←語彙力のなさ

ギリギリまで書きたいと思いますのでどうかよろしくお願いいたします!


この本の内容は以上です。


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