目次
はしがき
はしがき
第1章 ベンチャー企業の基本は挑戦である  <会社が生き続けるために必要なこと>
(1)失敗を前提に仕組みを作る
(2)なぜを繰り返す
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
(3)社長らしさは必要ない
(4)プラン・ドゥ・チェックをきちんとやる (5)目標設定の目的は、行動を起こすことにある (6)数字とアクションの往復を繰り返す
(7)まずは黒字化を目標にする (8)資金繰り対策にはファイナンスより売上を伸ばす (9)未来から学ぶには行動を起こすしかない (10)仮説を加えることで新しい価値が生まれる
(11)信用の蓄積が成長の分岐点
(12)自分との約束を守る
(13)リーダーは事業に「トチ狂う」
(14)キャピタリストの反応はこうよむ
(15)責任を引き受ける人が未来を明るくしていく、社会が豊かになり成熟してくると明日は安泰という気やすさとなる
(16)売上5億円からが本当の勝負
第2章 人が価値を生む
(17)こういう人がベンチャー企業に向いている (18)ロボットはいらない
(19)給料は十分条件ではない
(20)方向違いの成果主義は弊害が多い
(21)週100時間以上働くことを楽しむ
(22)稼ぐ人と動かす人、両方が欠かせない
(23)笑顔のある会社はいい会社である
(24)デキル人を目指すなら四の五の言わず実行する
(25)理不尽とのつきあいが無から有を生む
(26)数が多いと進化が遅れる
(27)未来を創りだす力には3つある (28)火事場の馬鹿時からを自覚できるか
(29)認めてあげることで相手のモチベーションがアップする
(30)会議は成長のエンジン
(31)会議が変われば会社が変わる
(32)課題に優先順位をつける
(33)しっかりと聞いて空気を読む
(34)行動が変わらなければ「わかった」ことにならない
第3章 決断の時が来る
(35)「成功の罠」と「日常の罠」に気をつけろ
(36)実行する脳をつくる
(37)無気力状態はこうして克服
(38)自信満々ほど危険なものはない
(39)ハイブリッドパワーを活用する
(40)支援を求めて「踊り場の危機」を乗り越える
(41)責任感過剰は失敗の連鎖を招く
(42)経営者の仕事は夢と金繰りに尽きる
(43)成長する企業の経営者は社員を怒らない
(44)正解がないときに決めるのが「決断」
(45)志をもって決断する
(46)巧遅は拙速にしかず
(47)永遠のベータ版でいく
(48)ヤル気だけでなく結果と向き合う
(49)予算とのずれがあるから成長する
(50)特殊・例外の多い会社は要注意
(51)会社の様子は社長の姿を映す鏡だ
図9
図10
図11
図12
Great Place to Work モデルの基本的な考え方
(52)世間を知って自分を変える
(53)無理な注文に応じる勢いが欲しい
(54)烏合の衆に陥らない
(55)ある時点で戦略の選択をする (56)経営者の人間力が良い人材を集める (57)行動の量と質、必要なタイミングを誤らない
第4章 愚直さがツキを呼び込む
(58)失敗したときにどうするかで明暗が分かれる
(59)実行は決断の連続
(60)「原因自分論」で自分を成長させる
(61)恥をかくのを恐れない勇気をもつ
(62)失敗は勝つために必要なプロセスである
(63)途中でやめなければピンチはチャンスに生まれ変わる
(64)人事を尽くして天命をまつ
(65)希望のレベルを高くもつ
(66)稼働率70%で考える
(67)どういう物差しをもつか
(68)危機の時こそビジョンが生きる
(69)投資家は心で投資することを知る
(70)したくないことはやらない
(71)どうしたら上手な意思決定ができるか
(72)ビジネスは淡々と急ぐべし
(74)素直な人が経営者として成長できる
(75)井戸を掘った人を忘れない
(76)ツキを呼び込むコツとは何か
(77)性善説を実行してみよう
(78)「運が良い」とはツキが継続することである
(79)机上の利を捨て、勘を信じよう
(80)「凡庸なリーダー」こそ、真の勝ち組だ
(81)幸せな企業には共通項がある
(82)聞くスキル
(83)子供の心を忘れない
第5章 センスを磨く
(84)海鳴りが聞こえるか
(85)状況設定力で成長を実現する
(86)投資家による投資判断のポイントはこれだ
(87)タイミングを捉える
(88)ゴミの山で宝を見つける見識
(89)鶏口か牛後か、それが問題だ
(90)自社の売りを考える
(91)立場を変えて見る
(92)経営とは未来を創造することだ
(93)ニーズの在り方と自分の夢をクロスさせる
(94)情理を尽くして説く
(95)ニーズはさぐるのではなく掘り起こす

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はしがき

自分で考える経営研修ノート

                    ~辻 俊彦 著 "愚直に積め" から学ぶ~

 

私は、新入社員時代を営業職からスタートし、約11年間にわたって営業活動の第一線で仕事をしてきました。その後、総務、人事、経理と約21年間管理部門の仕事をさせてもらい通算32年間の会社生活を送ってきましたが、そのような職業生活の中にあって転職した中堅企業や中小企業の事業運営には、多くの戸惑いと違和感を覚えたものでした。

それは仕方ないと言えば、仕方がないことなのですが、中堅企業や中小企業とは、今だ、発展途上の会社であり、数々の問題を抱えながらなんとか成長していこうと日々努力している存在だからです。

だからこそ、これらの企業は、私のような大手企業出身者を採用して新たなステージを踏み出そうとしています。このことは、言ってみれば社内に専門的な人材がいないので外部から招へいしようとしているわけです。この点も入社すればすぐに理解できることなのですが、私が経験した企業はすべて営業主体で組織が作られており、内部管理体制において最低限必要な機能をもっているに過ぎませんでした。先ずは食べていくことが前提であり、管理は社長自らがおこなっていることが大半です。

中堅企業や中小企業からすると、このことは、極当たり前の光景だと思います。

 大手企業だけで働いていると、このような光景を見ることはほとんどないと思いますが、データからみれば日本における企業数の約9割は中小企業であり、そこで働く人達は、労働人口の約7割にもなると言われています。むしろこの光景が普通であり、大手企業の光景のほうが特別なものなのです。

 往々にして、人は、自分が見た最初の景色を主体として物事を眺めてしまい、その他のものを客体として見てしまうという本能的な性質があります。それにしても私は、世の中を知らな過ぎた、と感じたものです。この頃は、これがやっと当り前だと少しずつ理解できるようになってきました。

 私のような人間を採用しようとする企業経営者は、少なからず今までの事業運営を改革しようという意欲をもっています。そうでなければ、高い人件費を払って雇用しようとは考えないからです。その意味でオーナー経営者は、常にシビアであり、自社の拡大発展という視座から目を離すことはありません。

もっとも直ぐに大手企業並みの事業運営を取り入れるかと言えば、これもまたそうではありません。理由は、経営者を中心としたシンプルな組織機能を有しているからです。いわゆる「ワンマン体制」といわれるものです。

世の中で一般的に言われる「ワンマン」という言葉の響きには、あまりこのましい言葉でとらえられていませんが、企業経営における「ワンマン」は一概に悪いとばかりは言えません。なぜなら企業が発展する過程は、人による強いリーダーシップが求められるからです。一般的に、企業における決定事項のすべてが社長で決まることを「ワンマン経営」と言っていると思われますが、ある程度の規模まで成長発展しているということは、まさに経営者の「リーダーシップ」が機能している証拠でもあります。

 それでも企業規模のさらなる拡大を目指していくという目的から、あるいは株式の公開を目指して内部管理体制を確立するため、という理由から多くの人材を採用します。

 私が見てきた企業は、すべて後者の株式公開を目標にして人材の採用をおこなっていた企業でした。当然、このような企業における処遇は、給与あるいは役職とも大手企業並みか、あるいはそれ以上の条件を提示されます。そこには、やはり経営者の強い意欲が感じられるものです。

このようにして中堅、中小企業へ入社して、それぞれの仕事をおこなっていく上で、いくつかの根本的な課題に直面します。

 第一は、入社直後は従来から継続されている経営者主導による事業運営が、当然ですが継続しておこなわれており、すべての懸案事項について経営者が決裁するという事実です。この点大手企業出身者がもっとも驚くことであり、自分がなんのために入社してきたか、という存在意義を見出せなくなる原因にもなります。

どうしてもこれまでの大手企業の実績をベースに物事を考えてしまい、新たな企業へ入社してその企業を前進させていくといった気構えや、処遇、いわゆる給与や役職によって、つい力がはいってしまうと言えそうです。また、目の前にある混沌とした状況をなんとかしたいという前向きな思いや姿勢から、じっとしておれないことのほうが自然なのかもわかりません。しかし、この事態は当分続くと思っておいたほうがよいでしょう。

 経営者は、確かに自社の次のステージへ向かって挑戦しています。だからこそ人材を採用するのですが、一方既存の機能、いわゆる「ワンマン体制」をすぐに解体することはありません。理由は、人や組織はすぐに変われないということを知り尽くしているからです。また、権限移譲は、一歩間違うと自分の経営者という地位を危うくさせる、と恐れるからです。だからこそ時間をかけて慎重に物事を進めていきます。この時間をかけるという部分は、こと営業活動に関しては真逆です。非常にスピーディに物事を決裁します。理由は、事情をよく知り現場の人間とも双方の信頼関係が構築されているからです。だからこそある程度の規模まで企業を発展させることが可能なのです。

 第二は、入社した人材のポジションについてですが、採用面接のときに詳しく説明する経営者であればよいのですが、間々説明不足で入社されるケースがあるようです。

 この場合、説明されるケースではおおむね次のような話をされることが多いと思います。私が総務人事の面接で経験した内容を簡単に述べてみます。

 「当社は、総務はあるが、数人の社員がいるだけで事務用品の発注や受付など簡単な仕事をしているだけです。現在、人事はありません。入社すれば、それぞれの機能を一から一人でやってもらうことになりますがよろしいですか。株式公開をおこなうので公開に対応できる内部管理体制の構築をお願いします。経理部でもすでに人材を採用しましたので協力しながら進めていただきたい。5年程度はかかると思っていますので、辞めないで責任をもってお願いします。また、会社特有の雰囲気がありますが、社員の人間性は良いと思いますのであまり心配しないでください」といった感じの話でした。

 かなり長時間にわたって説明を受けましたので、入社前の心境としては随分と良いイメージが残った感がありました。当然、このときの印象から長く勤務できるという直感がありましたが、株式公開を中止されたことで約5年弱で退職しましたが、説明されたとおりに実践してこられた経営者だったと思います。

 このように入社に際して十分な説明をされる経営者は、私の転職経験と面接経験から見ると非常に少ないと思います。先ずは、自分がおこなう仕事内容をよく把握しておくことが必要となります。

 また、役職や給与から見ると中堅企業や中小企業のほうが、大手企業より処遇は良いことが多いものです。一方、組織機能が出来上がっていませんから組織機能における役割の行使は、この段階ではできないことがほとんどだと思っておいたほうがよいでしょう。すくなからず総務以外の管理部門においても自らが先頭に立って日常業務をこなし、人を育て、役割分担を教え、組織機能を作っていくという作業が発生します。現在の仕事をこなしながら、将来のための仕事やるというダブル、あるいはトリプルの能力を発揮していく必要があります。それができて初めて役職者としての権限が発揮できるようになると思います。

また、この間、収益部門における権限移譲と会社全体における組織機能やマネジメント機能の構築といった、さらに骨太の改革が実行されます。こちらは経営者自らが計画的に進めていきます。これらの機能がある時点で融合されてきて、そして会社全体の機能ができあがります。勿論、その間には、人を育成しその機能を運用できるようにしておかなければなりません。このようなプロセスを是非イメージしておいてください。

 最後は、コンプライアンスに関してですが、入社時におけるコンプライアンスについて過剰な期待は避けることです。

どのような企業でもスタートは、営業優先で事業拡大を図っているため、先ず利益を出すことに注力しています。さらに就業環境があまり良くないため入退者が非常に多いといった特徴があります。そのような環境の中で対応していますので大手企業のような適切な管理がなされていないことが大半です。現実の問題から将来どのように転換させていくかを経営者といっしょになって考えていくことが肝要となります。経営者自身かなり悩んでいます。もっともこのようなことに悩んでいない経営者であれば、転職そのものを再考したほうが良いでしょう。

 なんといっても大きな矛盾を抱えての船出になります。

ひとつひとつのかじ取りについて経営者と慎重な議論と対応方法の検討をすることが大切です。そのような企業に入社された場合、企業を成長発展させるためのいくつかのステージがあるということを認識しておくほうが、仕事を進めていく上でより重要な要素だと思います。大手企業に在籍していた者からすると、「そんなの当り前」と思われるでしょうが、中小企業では、その「そんなの」ということがほとんどできていません。この点、非常に悩ましい問題ですが、経営者といっしょになって将来の着地点を探っていく努力が求められるでしょう。

 

 私は、ソニー子会社の立ち上げ業務をおこないましたが、ソニーの経営管理を実際に経験した者として、会社規模に限らず、どのような企業においてもある程度の経営管理が必要だと思っています。理由は、優れた経営者が存在している企業でも経営者が進める優秀な経営戦略を推進していくのは、紛れもなく、その配下にいる多くの社員達です。

 経営戦略が経営戦術となった瞬間から、これら多くの社員達によって経営戦略が具体的に実行されなければなりません。そのためには、当初経営者がもっていた権限を組織機構を作って移譲させる必要がでてきます。その訳は、経営戦略が経営戦術になったときから日常業務において、当初の目標に向けた経営戦略の修正や改善をおこなうという細かな作業が発生してくるからです。企業規模が50名程度であれば、直接社員へ指示を出し、日々、目標に近づけるための作業を経営者自身でおこなっていくほうが効率的であり、確実に事業運営の進捗管理が可能となるでしょう。経営者が身近にいて直接指示を出されるほうが、社員からみても仕事を進めていく上でわかりやすく納得がいくものになると思います。大手企業のように、わけがわかならい中間管理職の指示や業務運営より、厳しいが働きがいがある組織(会社)とも言えます。

 しかし企業規模が社員数で50名を超えてくるようになると経営者が一人で見るには管理可能な範囲に限界が見えてきます。実際、ある企業の経営者は、社員数70名くらいを超えるようなステージから社員一人一人の動きが見えなくなったと、話していました。それでもこの経営者は、300名近い社員数まで経営者自らが直接経営管理をおこなっていました。

当然、このような組織では、組織と役割に対応した職制は作られていますが、ほとんど機能していません。文鎮型のフラットな組織になります。いわゆる組織階層がないものになります。必然的に一般社員は、職務権限がない上司の仕事を見ていますから、表面上は別として本音では上司の仕事ぶりに滑稽さを感じているようでした。勿論、尊敬の念や信頼感をもつようなことはあまりありません。

 やはりある一定規模以上になった場合、企業の成長ステージを構築するために経営者は分権化と組織機能の大幅な改革をおこなっていく必要性がありそうです。そこに前述した「経営管理」の課題があると、私は考えています。

 この本は、良いビジネス書から現実の事業運営を学ぶと同時に、私が経験した企業実務を織り交ぜながら、経営管理を進めていく上でのヒントを伝えていきたいとの思いから書かせていただきました。

沢山の書籍を読んできましたが、残念ながらそれらの多くは企業活動の中で利用できるものが少なく、その中でも企業運営の実務に取り入れることができる書籍を身近に残してきました。その経験をベースに多くのみなさんの企業活動のお役に立つように工夫したつもりです。

 本書とともに、辻 俊彦氏の原著「愚直に積め」(東洋経済新報社)を是非一読していただきたいと思います。

原著の文章からにじみ出る思いは、その作者の心からの叫びにも似た情念の世界であり、その世界を感じることができる感性を養っていく努力が必要だと思いますし、私はこれからもその努力を続けていきたいと思っています。

 このような本を書くことは、みなさんへの伝言であるとともに、実は私自身の新たな学びの機会でもあります。そうすることでさらに自分自身を成長させていこうとする意欲が湧き上がり、これからの人生に対する意志をより明確にできるものだと信じています。


1
最終更新日 : 2011-08-17 11:47:01

(1)失敗を前提に仕組みを作る

辻氏の言葉

 ① 新規事業はほとんど成功しない 

   リスクコントロール(撤退基準等)が重要 

 ② 新規事業が既存組織から生まれることはない 

 ③ 成功確率を上げる唯一の手段は、的確な人選 

 ④ 事業化段階では予実比較を徹底する 


【経営研修ノート1】

 私は、ベンチャー企業に限らずその他の企業おいて、あるいは人間においての基本は“挑戦”することだ、と考えている。“挑戦”という言葉は、かなり高い目標に向かっていくイメージがあるが、私は、目標の高さもさることながら目標を完遂するための原理原則を学び、その“実行”、あるいは“行動”だ、と捉え得ている。

ベンチャー企業に在籍した経験からすると、わずか4社ほどだが、いくつかのパターンがあった。そのうちの2社は、独自技術をもって創業していたが、1社は「撤退基準」をある程度もっていたと言える。理由は、事業計画の未達等で株式公開をおこなうことができなかったが上場会社へ企業の売却をおこないベンチャーキャピタルや社員へ迷惑をかけることなく撤退できたからだ。また、経営者は、相応のキャピタルゲインを得ることができ設立出資に報いたものになったように思う。

2社とも当初計画の目標達成にはほど遠かったが、もう1社は上場後、大手企業に対する株式割当増資を数回おこない、なんとか今日まで生き延びているが、当然、株価は長期低迷している。

 他2社は、1社は独自技術をもっているとされたが事業化途中、いわゆる研究開発途上であり、4年目になるが事業化の目途が立っていない。また、今年度、表向き業績悪化といわれているが、実際は、ベンチャーキャピタルをはじめとする投資資金が底をつき社員の早期退職がおこなわれているようだ。また、社員へ賃金の一律カットの提案がおこなわれ、労働組合が結成されて、しかも整理解雇と称して組合員だけを対象とした解雇をおこない現在係争中である。

さらにもう1社は、同業種の経営者(オーナー)達による出資で立ち上げている企業だが、業界内の専門的な知識、事業運営ノウハウ等をしっかりともっており、コンスタントに成長させている。株式公開を目指していたが、事業運営における会計処理に課題があるとして、株式公開を中止するようにアドバイスした。

現在、出資企業を中心とした運営で着実に事業の成長を図っている。株式公開を目指しても、多くの点で株式公開要件に抵触すると思われるので、非公開型の事業運営が妥当なところだと思う。

 辻氏が書いているように新規事業はほとんど成功しないというのは、前述の私がみてきた企業からみても“正解”だと思う。

また、成功している場合は、既存ビジネスの延長線上に、新しいビジネスモデルを付加した場合である。この点からリスクコントロール(撤退基準)を明確にしておく理由がある。このような対策がない場合は、むやみに突き進み、多くの利害関係者に迷惑をかける結果となる。

 この点で、マザーズに上場した株式会社エフオーアイという会社の問題を見てみよう。

 この会社の簡単な内容(by Wikipedia)は、次のようなものである。

 「有価証券報告書に記載されている20093月期売上高は118億円としていたが、実際2億円程度であったことが20105月中旬に判明。粉飾の手口は出資ファンドからの出資金を簿外に移した後、製品の売上金として計上する手口で売上高を水増ししていたり、[1]架空の仕入先に代金を振り込み、架空の売却先からの受注があったように装い入金させることで架空の売上を計上。[2]上場審査時の粉飾決算が明らかになったのは初。また、新規上場から上場廃止までの期間は過去最短となる」

 要は、事業運営の実態がない架空の会社を上場させていたということだ。このような実態から監査法人、東証等多くの関係者の責任問題に発展している。

この会社の社長は金融商品取引法違反ですでに逮捕されているし、会社もすでに破産し上場廃止となっている。

 この問題の深刻なことは、この経営者が大手電機メーカーの出身者であり、ビジネスに精通していたことだ。一般的に大手企業の経営を主導している立場にいた人というのは、起業における先導者として高いポジションで評価を受ける。しかしこのケースは、むしろこれが仇となった格好だ。

 私が経験した1社も同様に大手企業において取締役まで務めた方であったが、本人がもつ“自信や自負心”からすると、なんとも危ないマネジメントだ、と思われた。少なくともこのような経営者がもっている資質をみながら仕事をすることになる。

大体において、このような自信過剰なタイプの経営者は、真っ当な話に耳を傾けることがなく、逆に経営における専権的人事権を行使することが多い。

 このことは、辻氏が言う「的確な人選が必要」だが、往々にして不適格な人選をおこなうことが多いと思われる。人事には、あらゆる面で経営者の経営哲学が現れるし、その企業を作っている骨格となる。所詮、“企業は人なり”である。

 さらに「予実比較を徹底する必要がある」については、ベンチャー企業に限らず、これがまた徹底されていない企業が実に多い。

できている企業は、完璧ではないが人の人選がそこそこできており、予実が行動計画の源泉としてある程度徹底されている。また、ある程度は経営管理能力がある社員を人選して事業をおこなっており、経営者がおこなう経営戦略を現場レベルの経営戦術で普段に実践している。また、予実比較をおこないながら次のアクションプログラムに結び付けていくことができる。

本来、経営者と社員は、信頼関係に基づき的確な連携プレーがおこなわれ、戦略レベルを戦術レベルに転換し、事業計画の目標を達成していくことが要求される。経営者と社員は、それぞれが経営戦略と経営戦術の役割と機能を分担しながら、事業運営をおこなうことで、良い結果を生み出すものだ。

 辻氏が言う①~④の内容は、ベンチャー企業に限らず多くの企業で経験したが、それぞれの実践段階で的を得た結論であり、事業開始においては、ベンチャー企業にかぎらずこの点を徹底することだ。


2
最終更新日 : 2011-08-18 16:12:42

(2)なぜを繰り返す

辻氏の言葉

 ① 会社側の課題認識の欠落 

   その場限りの議論 

     数字から導き出されえる結論が陳腐 

 ② 記憶力は有限だが、指向力は無限 


【経営研修ノート2】

 “なぜ”の点では、ソニーで学んだQMDEIを取り上げてみようと思う

 先ずQMDEIについて説明しておきたい。

 Q=Quality 

  M=Management

  D=Determination

  E=Education

  I=Implementation

  それぞれの頭文字をとってQMDEIと称されている。

 私が在籍していた当時のソニーでは、”ソニーの使命とQMDEIの目的”について研修をおこなっていた。

現在、一般的な言葉になったが、”Customer Satisfaction”を全社的な企業風土として確立するためにグループ企業を含めて推進していた。

 QMDEIは、いかにしてお客様の満足を得るかという企業目標達成のために、ソニー内部で確立した経営手法のひとつである。私はこれまで多くの研修を受講してきたが、そのほとんどを忘れているが、QMDEIの手法はCSに限らず、あらゆる業務に活用できると思っている。そのため研修以降、どこへ行ってもなにか問題が発生する度に研修資料を捲りながら問題点の改善を進めてきた。

 これまで実践で活用してきたのには少し訳がある。

 それは、私はいろいろな物事を眺めていると、ついこれは”なぜだろう”と思う習慣が身についている。どうしてこのようになったかは、あまりよくわからない。理由はどうあれ、仕事を進めていく上で、常に”なぜこのような対応をとるのだろうか”、といった疑問を持ちながら、また、その疑問に関する背景や根拠を突き止めるまで、自分が納得できる“解”を見つけるまでやるという習性が本性になってしまった。

 辻氏が著書で”なぜを繰り返す”ことで現状の課題を見つけ出し、具体的な対策をあぶり出すと書いている。

 まさにQMDEIと同じ手法である。

ソニーでは、この”なぜ”を全社員で進化させていきながら、会社があるべき姿にしていこうということで体系化を図っていた。経営者から一般社員まで、この”なぜ”をおこなうことで問題点の本質にまで到達し、業務の本来的な改善を実行している。

上司からすれば、会社内で共通言語をもつことは、一般社員と仕事を実行する際の課題解決に対する理解が進み、しかも問題点があれば”なぜ、なぜ”手法で具体的に解決していくことになる。実にシンプルでわかりやすい。他社へ転職してからも自ら活用してきたが、ソニー時代同様に機能することがわかった。

 

QMDEIの手法を簡単に説明しよう。

 先ず図1では、企業経営の鉄則である経営戦略と経営戦術(方法)について説明している。表現方法は各社各様だろうが、内容はそれほどかわらないと思う。経営者による経営方針(経営戦略)がだされ、それに基づいて各部門の戦術(経営管理)が実行されることになる。

当然、良い経営戦略と良き経営戦術があれば①のエリアに該当する。また、その他のエリアに該当する場合も①のエリアへ到達させるべく、日常業務の改善を全社員で実行していくことになる。

 どの企業においても到達すべき目標は、すべて①のエリアだということは理解できているものだ。また、良き経営者が存在することで良き経営戦略を打ち出すことが可能だろう。しかしそれだけでは目標達成はできない。理由は、良き戦略を実行できる社員がいてはじめて目標達成が可能となるからだ。

 経営戦略は、実行レベルになった途端に経営管理(戦術)になると言われる所以である。しかも良き経営戦略は優れた経営者一人で描くことも可能だが、経営戦術レベルになると同時に、社員の実行能力、実現能力へ転化される。

経営管理(経営戦術)の重要さは、このように経営戦略に基づく事業展開ができる社員を何人もっているかで、その達成が決まるといっても過言ではないだろう。それゆえ社員一人一人が経営戦略を実行できる能力を備えるために、日々の実践を経てその経営管理能力(経営戦術能力/業務遂行能力)が身についてくるものだ。

 経営者の中には、この理屈が理解できていない人がいる。

 一般的に経営者は、損益計算書が好きだ。いくら儲かっているかがわかるからだ。では、儲けるための源泉といわれる投資のための資金はどこにあるのか。当り前だが、貸借対照表の中にある。

 経営管理とは、いってみれば貸借対照表の中にある人的資産と物的資産としてのストックとして捉えることが可能だ。ストックには、資金としての内部留保金と人における人財がそこに表されている。このことは、それぞれの企業が企業独自の経営手法によって長い期間をかけて積み上げてきたものである。

良い業績を上げることができる企業は、経営戦略もさることながら、その経営戦略を着実に実行しながら結果を残せる人材が多数いるということだ。

 図の四つのエリアは、仮に経営戦略が正しくて結果が出ていないということは、経営戦術レベル(経営管理)における人材に課題があるということになる。

中小企業は、このタイプがほとんどである。どこに真の課題があるかを真剣に考えてみることだ。

 次の図2は、QMDEIのフローチャートである。

 QMDEIは、経営者から一般社員まですべてが対象となる。先ず経営者、管理職、一般社員に限らず目標達成に向けたそれぞれのレベルにおける「決意」が必要となる。いわゆる”コミットメント”であり、コミットメントとは、日本風に言えば、”やると思えばどこまでもやるさ”という意志の表明である。

 次に経営者、部下をもつ社員は、それぞれのポジションにおける役割を前提として部下を指導教育することが必要になる。

なぜQMDEIを通して会社目標を達成させるかといった企業理念の説明や、あるいはQMDEIの具体的な進め方を指導教育していきながら、目標達成に向けた仕事の改善をおこなっていくことになる。また、監査部門は、業務監査をおこなうことで適正な業務の進め方の指導と改善を進言し、企業目標達成のためのサポートをおこなう。ソニーでは、毎年1回、抜き打ちで業務監査が実施され、監査と同時に業務改善の指導が具体的になされている。当然、社員に対する指導育成と問題がある業務プロセスがあれば業務プロセス自体を改善させていくことになる。

 実行レベルでは、社員からの問題点や課題の抽出がおこなわれるが、なにもQMDEIを意識することなくやるべきことなのだが、日常業務の中から気づいた人が出していくことになる。至急でない課題等は、一か月まとめて出して検討会をおこない改善させていく。検討会において改善させる内容をより具体的に、そしてより本質まで近づけるために「ソニーの窓分析」を活用する。「ソニーの窓分析」は後述する。

 次に図2は、QMDEIのフローチャートであるが、全体的な流れを表している。実務では、実行レベルを繰り返しながら仕事の精度を上げていくことになる。

 図3は、実行レベルにおける具体的な作業手順の流れを表している。

 図4は、QMDEIを実行する際の具体的手法の関係を表している。

 図5は、課題から未然防止にいたる流れを表している。

 図6は、原因分析における「狙い」と「手順」について書いている。

 ここにおいて”なぜなぜ5回”という言葉が出てくる。

真の原因に到達するまでは、経験則からして、5回程度、問題項目や課題となる項目を深堀する必要があると考えている。勿論、1回や2回程度で真の原因にたどり着く項目もあるだろうが、よりむずかしい問題や課題に直面したとき”なぜなぜ5回”が真価を発揮することになる。

 図7は、原因分析をするときに活用するチェックシート(ソニーの窓分析)である。

 図8は、問題点や課題の各項目から真の原因を探し出し、そこから発見した改善策を展開するための実行用のシートである。

教訓化から未然防止へ発展展開できるようになると組織機能は格段に成長する。

長くなったが、辻氏が言っている「なぜを繰り返す」のは、思考の拡大と真の課題の発見、さらに、それに基づく本質的な可能性へ挑戦し、経営戦術レベルの実行能力を高めることになる。


3
最終更新日 : 2011-08-18 15:57:00

図1


4
最終更新日 : 2011-08-17 11:57:46

図2


5
最終更新日 : 2011-08-17 11:59:54


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