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チェンジ

 また入れ替わってる。さっきの授業までは篤だったのにいま窓際の席に座っているのは翔だ。双子の鞘野兄弟はふざけて時々クラスを入れ替わる。そして終業のチャイムが鳴った途端、手を叩いて悪戯の成就を喜ぶのだ。ほんとにこどもなんだから。篤より涼やかな横顔に、今日もわたしだけが気づいてる。

お客様

「お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか」手を上げた医師が倒れた男を診る。そして首を横に振る。「なんとかして下さい」CAは医師にすがりつく。「私は神ではありません」CAは振り返り再び声を張り上げる。「お客様の中に神様はいらっしゃいませんか」客が皆手を上げた。

エイプリルフール

「ママは学生時代すごくモテたから男の子たちに言い寄られて大変だったのよ。だからね、エイプリルフールにみんなを集めて言ったの。いちばん素敵な嘘をついた人と私、結婚するわって。ね。あなた」「ああ」「パパ、ママになんて言ったの?」「君は自分が思ってるほど美人じゃない」

世界

 錆びた鉄の匂い。俺は滑り台に寝転んでいる。大人の体には少々窮屈で、棺桶に入れられているような気がしないでもない。だが星空の天井はどこまでも広がっている。今日から俺の部屋は世界。壁もドアもない。腹は空いていても、満たされた、いや、赦された気分で俺は、眠りに落ちる。

目刺し

 人を保存するには干すのが一番。あーだめだめ、そこは硬いから。目を刺すんだよ。そう。後頭部に向けてね。少年は鉄の棒を男の右目に突き刺す。まだ生きていたのか男の体は急にぶるぶると震え出す。ゼリー状の眼球が地面に零れ落ちる。丘の上では完成した目刺しが春風に揺れている。

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