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光を運んできたのは人だった!

  それは、四月中旬の夕刻、一つの呼び鈴から始まった。

 筆者は、呼び鈴が鳴った時に相手が誰かを考える習慣はあっても、出ないという選択はまずしない。自営のための事務所を兼ねる住居にはさまざまな人が訪れる。近所の住人のこともあるし、仕事用の資材を届けにくる宅配便のドライバーのこともあれば、郵便の配達員のこともある。当然、各種の勧誘も多いのだが、基本的に受け入れる形で暮らしている。

 この時は、NTT西日本の代理店という男性が首に下げた身分証明書を指でつまんで示しながら名乗った。

「今、フレッツ光のキャンペーンをやってまして」

 聞いた瞬間の感想は、正直、

 ああ、またか。

 だった。

 こちらは一住民としてのみでなく、事業者としても電話や訪問による営業を数多く受けている。営業を受け慣れていると言ってもいい。そんな状況だと、何を売りにきたかを聞いた時点で頭が断る方へ舵を切る。受け入れるとはいっても応対までで、勧められたものを何から何まで購入するわけにはいかない。不要なものの説明を長々と聞くために時間を費やすわけにもいかない。時間はお金同様に貴重だ。

 加えて、フレッツ光に関しては以前にも話を聞いたことがあり、毎月の費用の面で折り合わずに断った経緯があった。しかも、筆者の家の通信環境は商売を営んでいる関係上少し特殊で、NTT以外の電話会社からの勧誘があっても二つの特徴を話した時点で営業してきた側から話を打ち切る、というのが常だった。断るのに便利なので先手を打つようになり、反射的に話せるようになっていた。

「うちはフレッツISDNでね」

「ISDNですか」

「番号、三つ使ってるんですよ」

「三つ、大丈夫ですよ」

「大丈夫?」

 今にして思えば、ここが光への道の分岐点だった。


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最終更新日 : 2011-05-17 07:01:57

プロバイダーが997円!?

   先のやり取りが分かりづらい読者のために書いておくと、NTT以外の固定電話の事業者だとフレッツISDNの名称を出した時点で大抵降りる。定額での接続サービスを提供できないからだ。

 以前はたまに頑張る人がいたが知識不足なだけで、話す人を変えてもらうと結局駄目だということが判明する。最近では情報も行き渡ったらしく、すんなり解放される。

 一頃、ADSL関連の勧誘があった際には、複数の番号を使っていることを伝えると話が終わった。これもサービスを継続できないからだ。ADSLではiナンバー(ISDNで複数番号を使い分けるサービス)が利用できない。

 とにかく、一回線で二回線分利用でき、複数の電話番号が使い分けられる機能は手放せない。定額インターネットも必須の条件だ。この三つが、今となっては少数派のISDNを十年使い続けた理由だった。

 話を対面の場面に戻そう。

「大丈夫って、前はできないって言われたよ」

「そりゃ、おかしいですよ。できないなんて言ってたら仕事にならないですよ」

「……」

 このあたりで断る気持ちがぐらついている。振り返ってみるとフレッツ光で複数の電話番号が使えないという認識は記憶違いからきている。三年前にNTTから直接勧誘を受けた時の提案書では、ちゃんと三つの番号が使えるようにプランが作成されているからだ。切り返してくれた代理店の営業には感謝すべきだろう。

「三つ番号が使えるとして、でも、料金高いでしょ?」

「そんなことないですよ」

 手渡されたお客様用控えには十分に関心を引くだけの数字が並んでいた。

 まず、フレッツ光の月額基本料金は3,559円とあり、

 まあ、こんなものだろう。

 と軽く流し見た。

 大事なのはプロバイダーの費用だ。以前に提案された時のネックだったからだ。しかし、示された金額はとても安かった。思わず目の前の人間を悪徳業者ではないかと疑うほどに。

 997円!?

 分岐点から光へ向かう道に顔の向いた瞬間だった。


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最終更新日 : 2011-05-17 17:36:35

お取り置きはなしで!

  代理店の人間が勧めたプロバイダーはYAHOO(マンションタイプ)。

 聞けば、この春から提携が可能になったとのこと。ADSLやIP電話のサービスは知っていたが、プロバイダーとしてのYAHOOは知らなかった。それにしても安い。

 何せ勧誘を受けた時に使っていたプロバイダーは月額735円。金額だけならこちらが安くてもISDNだ。中身が全く違う。この業者はメジャーでこそないものの全国にサービスを提供しており、親会社は東証一部に上場している。訳あって名前は明かさない。理由は後述。

 ちなみに、この時点での料金の内訳は以下のごとくだった(通話料金は除く)。

 

 基本料(事務用)  3,530円 / iナンバー(3番号)  400円

 フレッツISDN利用料  2,800円

 マイラインセット割引  マイナス280円(フレッツISDNに適用)

 ユニバーサルサービス料  24円(3番号分)

 

 基本料はINSネット64に対してのもので、家庭用だと2,780円だ。仕事上番号を電話帳に載せる必要があり、掲載を要請した時に区分が変わった。たとえネットの時代でも、商売をする者が電話帳に番号を載せるのは基本中の基本だ。

 マイラインセット割引は、フレッツISDNを利用している電話回線でマイラインプラスを市内通話と同一県内の市外通話の二区分ともにNTTを指定するとフレッツの月額利用料から10パーセントが割引されるサービスだ。フレッツADSLにも適用されるのに、なぜだかフレッツ光だけ同様のサービスがない。

 いくつかのやり取りを経て、ネット接続とプロバイダー料金が定額であることを確認できた。その上で正確な料金と工事費を計算してもらい、YAHOOにホームページ用のスペースがあるかどうかを確認してもらうため、いったん話し合いを終えることにした。

「契約するって意味じゃないですけど、予約しておくことができますよ」

 代理店の営業が言う。何でもVDSLの空きがあと二つしかないらしい。ちなみにVDSLは配線方式の名称だ。この時点では二回線契約する前提だったので、もし他の住居で一つでも契約が決まればフレッツ光の導入は断念せざるを得なかった。正直、気持ちが揺らいだが、なし崩しに契約する羽目になりそうだったので平静を装って言った。

「その時は、まあ、縁がなかったってことで」

 焦る必要はない。多少不自由なだけでネットの環境は今もあるのだから。


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最終更新日 : 2011-05-17 21:57:41

最悪、NTTに直接ネジ込もう!

  どうして三つも電話番号がいるのか? と訝る人もいるだろう。割り当てを書いておくと、プライベート用と仕事用、それとファックス用だ。

 プライベート用と仕事用を分ける理由は、お客様が電話をかけやすいようにするためだ。受ける側としてもどちらの用件でかかってきた電話か迷わずに済む。ファックスについては兼用もありだろう。けれども、これも受ける側としては分けた方が便利だし、名刺に印刷した場合も印象が違う。この点は数多くの名刺を見た経験からもそう思う。

 いずれにしても、電話に関するサービスの変更は慎重にならざるを得ない。工事費のような一時的な費用ならまだしも、月々の料金は継続的なので積み重なれば負担が大きい。

 ネットの根づいた時代とはいっても、顧客とのやり取りに電話は欠かせない。何かトラブルが生じて電話を受けることができなければ貴重な商機を逸する。

 代理店の営業が帰ってからまず行なったのは、ネットでのYAHOOの料金の確認と名刺に記載されている代理店のホームページへのアクセスだ。NTTという大手企業の代理店とはいえ、最低限の情報収集はしておくべきだと考えた。

 YAHOOでは、金額とホームページのスペースがあることを確認できた。

 問題は代理店のホームページだった。何と、本社が近畿にある。そしてこちらでの営業所は記載がない。営業所に関しては単なる更新の手抜かりとして、まさかこんなに遠方の事業所だとは思わなかった。営業所も同じ都市圏内にあるとはいえ、全く区域が異なる。トラブった場合、交渉の困難は確実で嫌な感じだ。気持ちが揺れる。

 そもそも県をまたいで営業しても非効率なだけだろうに。筆者の住居と営業所の距離も相当なものだ。訪ねてきた時刻もかなり遅い。採算が合うのか疑問に思えたが、そのぐらいNTTが光ファイバーの普及に力を入れていて、代理店にも相応のインセンティブがあるのだろうと思い直した。初対面の人間からの購入は判断が難しい。

 この時点での費用がプロバイダー込みで7,209円、光に切り替えると試算では7,730円。およそ500円の差で、ネットの快適さを買うと思えば納得できる金額だった。元々関心はあったため、導入への思いが強く湧く。ほぼ腹は決まっていた。

 気持ちが傾いた主な理由はプロバイダー料金の低下だ。以前に検討した際、示された金額は一番低いものでも光プレミアムとの合計で6,038円。今回の4,000円強とはだいぶ差がある。これが作用してトータルの金額が縮まった。

 最悪、NTTに直接ネジ込もう。

 そう心に決めて、最初の日は終わった。


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最終更新日 : 2011-05-18 07:06:12

直接問い合わせろ!?

 週が明けて代理店から連絡があった。

 YAHOOのサービスにホームページのスペースがついてくるという話で、既に自分でも確かめておいた内容だったがありがたく聞いておいた。

 ややこしくなってきたのは料金の話に入ってからだった。『オフィスタイプ』という種類があり、それを導入すると複数の番号を使い分けられるのだという。しかし、代理店自体扱った経験がなく、間違いがあってはいけないので直接NTTに問い合わせてほしいというのだ。

 代理店の意味がないんじゃないか?

 ちらりと思わなくもなかったが、正直ありがたかった。ごまかされたりする恐れがなく、細かい部分も導入前から把握できるからだ。

 自分の環境の特殊性を思いつつ、フレッツ光専用の問い合わせ番号0120(116)116を教えてもらって早速かけた。

 オペレーターの女性に訳を話すとオフィスタイプは専用の問い合わせ番号があるので、そちらにかけてほしいと言う。その方がよく分かるらしい。

 つくづく特殊だ、と思いながら、教えてもらった番号0120(458)202にかけると実にテキパキとした女性が応対してくれた。さすがは『オフィスタイプ』。

 問われるままに住所と名前、電話番号を答える。どうやら『プレミアム・ネクストマンション』という商品名のVDSL配線方式でプラン1(契約した今もプランの相違については把握していない)を採用することになるらしかった。代理店の置いていったお客様用控えを見ると同じ配線方式でもプランによって料金が異なる。

 結局、以下の料金となることが明らかになった。


 フレッツ光  3,559円 / 基本料金(番号) 1,365

 番号追加(番号) 210円 / ボイスワープ 525

 ひかり電話用機器レンタル料  1,050


 面白いことに、ひかり電話は当初に回線契約する予定だった場合と同額だった。ユニバーサルサービス料の話はなかったが、当然かかるものと心得た。

 筆者は今回の契約にあたり、思い込みから三つの失敗を犯している。この段階で見過ごした失敗が一番大きく、しかも取り返しがつかないものだった。詳しくは後述する。この時に工事費の明細も聞いており、やはり後述する。


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最終更新日 : 2011-05-18 22:15:47


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