閉じる


ペイ・パー・ビュー

 

 

 

 

 

「よし、できた……。あとはサイトにあげるだけ、と」

 オレはタペストリPC(壁掛け式薄型端末)で書きあげた小説を上書き保存し、ネット上にアップした。ディスプレイ中央に「問題なくアップロードされました」というメッセージが表示され、同時に、画面右端に出しておいた電子マネー口座から小気味よい音が鳴り響いた。順調にイピ(電子通貨)が振りこまれている証拠だ。オレは心地よい疲労を感じながら、イスにもたれ、鼻歌交じりにその光景を眺めた。

 もともとは遊びでネットにアップしていた小説だが、いまやこれでメシが食えるのだから、世の中なにがどうなるかわからない。ほんの一握りのファンがいるおかげで、毎月、オレの口座には閲覧料やら、ダウンロード料金が飛びこんでくる。

 一昔前なら、こうはいかなかっただろう。世界的な著作権システムが開発されたおかげだ。ほぼすべての著作物がネット上で管理されるようになってからというもの煩雑な許諾申請が不要になった。

 ペイ・パー・ビュー(見たければ、お金を)。

 この徹底した精神の持ち主であるハリエット・ワグセン氏のシステムのおかげでいまや著作権の承認手続きは、クリックするかどうかだけの簡単なものになった。

 たとえば、新しい楽譜が欲しいとする。

 ネットショップで売っている楽譜ならば、「購入」を選択すると会計の画面に飛び、そのまま商談を成立させることができる。

 では、ショップで売っていないような楽譜は? インディーズバンドの新譜は? 個人ブログでアップしている楽譜は?

 答えはネットショップと同じだ。「閲覧希望」や「購入希望」ボタンを呼び出せばいい。すると、ワグセン氏の複雑な演算プログラムが全世界の閲覧状況を鑑み、最適な「閲覧料金」または「購入料金」を権利者に伝えてくれる。権利を持つ人(ここでは楽譜を書いた人)がその金額に満足すれば、希望者は「閲覧」や「購入」が可能になる。

 実にシンプルなシステムだ。

 国際的なベルヌ条約もいまやワグセン・ルールの前では無力になりつつある。

 それがいいことなのかどうかはわからないが、おかげでネット上では様々なテキスト資料や動画がひしめきあい、およそ知りたい事柄にたいして答えがないということはなくなった。(もちろん玉石混交なのはいうまでもないが)

 情報は金なり。

 オレは小気味よい入金音に耳を傾けながら時間を確認し、いつものように、お気に入りページをディスプレイに表示させた。

“カジュアル・ポイントへようこそ!”

 ファッション・コーディネーターのサイトだ。「はじめに」の説明書きのしたに必要項目を入れるための空欄がある。オレはいささか見飽きてきた空欄に情報を入力した。

「場所:イタリアンレストラン」「時間:夕方」「相手:20代女性、1名」

 エンターキーを押すと、いつもどおり確認のメッセージがあらわれた。

“この先の情報を閲覧するには、80イピが必要です。よろしいですか?”

“Yes”

 なんて安さだ。オレはこのサイトの金額設定を見るたびに笑ってしまう。だが、この低価格が人気の秘密なのかもしれない。設置されているアクセスカウンターを見れば、一目瞭然だ。

 オレの小説も低価格路線にすべきだろうか?

 ぼんやりそんなことを考えていると、目の前にコーディネイト・アドバイスがあらわれた。

“黒のカジュアルジャケットに白のVネックシャツ、グレーのチノパン。靴はダーク色の革靴がおすすめです――アドバイスを保存しますか(50イピ)”

“No”

 オレは無駄遣いの誘いを拒否し、タペストリPCの電源を切ると、すぐさまシャワーを浴びた。ろくに寝ていない状態なので熱めのお湯で目をさまし、フレグランスを軽くふりかけ、クローゼットからジャケットとシャツを引っ張り出した。もちろん、アドバイス通り、黒と白だ。

 髪を乾かしヘアースタイルを整えたオレはシャツに袖を通し、ジャケットを着た。洗面台の鏡で確認してみると、なるほど確かに悪くない。80イピの価値ありだ。オレは一人でうなずき、ナノカ・リーの喜ぶ顔を想像した。彼女の笑顔を見るたび、オレは神に感謝したくなる。知りあうきっかけをくれて、神よ、ありがとう。

 ましてや、オレの小説のファンときた日にゃ、神よ、ふたたび、ありがとう、だ。

オレはにやけた顔のまま、ベッドのうえに放り出してあったカードPC(超薄型スマートフォン)を内ポケットに滑りこませ、部屋を出た。

 すると、ほぼ同時にカードPCのアラームが鳴りだした。

 内ポケットから取出し、ディスプレイを覗きこむと、ペイ・パー・ビューのお知らせメッセージが表示されていた。

“利用許可:写真(肖像権)。利用目的:商談用資料作成のため。申請者:(株)都市開発事務所。申請料:500イピ 許可しますか? 「Yes」「No」”

 なんだこりゃ?

 オレは一瞬なんのことだか、わからずに首をかしげた。が、すぐに疑問は氷解した。

 そうか、写りこみだ。

 誰かが撮った写真のどこかに、オレが写りこんだらしい。いまやデジカメのデータは、リアルタイムでクラウド・コンピュータと接続し、保存されるから、そこでチェック(顔認証システムとGPS位置情報で確認するらしい。恐ろしい話だ)が入り、必要な権利者のもとへ申請許可が来るようになっている。(ちなみにオレがアップしている小説のダウンロード許可は、設定で自動承認している。いちいちポップアップがあがるのは面倒だからだ。だが、それ以外の申請についてはご覧のとおり、ポップアップで気づくようにしている)

 もちろん、許可すればそれだけの使用料がオレの口座に入金される。拒否すれば、写真の使用は認められない。モザイクを入れるなどの処理が必要になる。

 都市開発事務所という名前から察するに、ビルかなにかを撮影していたのだろう。まわりで撮影しているような光景は見当たらないから、写っていたとしてもコメ粒ぐらいにしかならないはずだ。オレはしばらく考えてから「Yes」を押した。

 ワグセン・システムのおかげでこうしたちょっとしたことでも、利用料が支払われるようになった。テレビカメラに映ったり、誰かの記念写真にうっかり写りこんでも、利用料は申請され、必ず権利者に使用料が振りこまれる。

 小気味よい入金音が、カードPCから響いた。

 いい小遣いだ。

 オレは思わず口笛を吹いた。

 

     *

 

「今月の先生の作品、早速、ダウンロードして読みました。すごくおもしろかったです」

 ナノカ・リーは屈託のない笑みをうかべて、いった。無邪気に焼き立てのピザをほおばりながら、オレの小説のよかったところを熱心に語ってくれている。

 前にもいったが、ナノカはオレの小説のファンだ。オレが小説をアップするたび、メールでファンレターを送ってくれるとてもいい娘だった。ナノカのメールは、いつも優しい気遣いがあり、オレは毎回、読むのを楽しみにしていた。オレは一生懸命、返信を送り、ナノカもそれに答えて、返信してくれた。そんなやりとりを繰り返しているうちに、オレたちはいつしか付きあいだしていた。

 付きあってはじめてしったが、彼女は某有名大学の三年生で文学部に在籍する典型的な文学少女だった。そんな彼女がどうして、オレの書く三文小説を好きになってくれたのか、いまだにわからない。蓼食う虫もなんとやら、とはよくいったものだ。

 眺めが素晴らしいことで有名なイタリアン“ボーノ・ボーノ”の特等席にナノカと座るのはこれで三度目だったが、一度も景色の話はしなかった。なぜなら、二人とも景色には興味がなかったからだ。オレはナノカを見つめ、ナノカはオレを見つめていた。

 ナノカは今日もかわいかった。大きな瞳に、小さく締まった口、全体的に幼さが残った童顔でしぐさもどことなく子供っぽい。だが、フレアーチュニックの大胆にカットした胸元からみえるふくらみは、あきらかに大人の女だった。

 オレは赤ワインを飲み干しながら、ナノカの褐色の瞳をさらにのぞきこんだ。

「褒めてくれてありがとう。でもね、オレはきみがいるおかげで小説が書けるんだ。きみのそのよろこぶ顔が見たくて……だから、その、これからも応援してほしいな」

 さりげなく手を握ると、ナノカの顔はワインのように真っ赤になった。うつむこうとするナノカを制するようにオレは話を続ける――予定だった。

 場にそぐわない、アラーム音が鳴った。ペイ・パー・ビューのお知らせ音だ。

 オレは咳払いをし、カードPCのディスプレイを見た。

“利用許可:写真(肖像権)。利用目的:報告書添付資料作成のため。申請者:(株)田中空調。申請料:500イピ 許可しますか? 「Yes」「No」”

 また、写りこみだ。

 オレは少しうんざりしながら、周囲を見た。作業員らしき男が、こちらにむかってペコペコと頭をさげ、うえの空調機を指差し、拝むしぐさをしていた。

 どうやら、空調修理が終わったことを証明するために撮影した写真に写りこんだらしい。

 どんなアングルで撮れば、オレが写りこむっていうんだ。

 オレは思わず叫びたくなったが、ナノカの手前、言葉を飲みこんだ。

 飲みこんで正解だった。

「やったー。見てください。臨時収入ですよ。先生」

 ナノカが自分のカードPCを見せびらかしてきた。そこには、オレのところにきたのと同じ田中空調からの利用申請依頼が表示されていた。ナノカは無邪気にお小遣いが入ったと喜んでいる。

「先生、映画見に行きましょうよ、映画!」

「ああ、そうしようか……」

 オレはなんとなく腑に落ちなかったが、ナノカと同時に承認ボタンを押し、それぞれ500イピを受け取った。

 

     *

 

 オレは100イピを支払い、いま流行りの映画情報をカードPCで閲覧し、近くの上映館を検索した。さほど遠くないシネコンで、ナノカの好きな俳優が出ている映画を見つけたので、そいつを見に行くことにした。

 前から見たい映画だったらしく彼女は、“ボーノ・ボーノ”を出ると嬉しそうにオレの手を引っ張り、案内役を買ってでた。間に合わなかったら大変ですよと、それこそ子供のように頬を膨らませ、抗議のマネ事までしてくる。

「大丈夫さ、上映までまだ30分ある。ほら」

 保存した上映時間の情報をカードPC上に表示させると、ナノカは顔を近づけてきた。無防備な距離感だ。端末を持つ手に彼女の息がかかる。

「本当ですね。じゃあ、映画館までゆっくり、お散歩しましょう」

 彼女が嬉しそうに目を細めた――そのときだった。

 また、アラームが鳴った。

“利用許可:写真(肖像権)。利用目的:道路撮影。申請者:(有)エール土木測量。申請料:500イピ 許可しますか? 「Yes」「No」”

 なんなんだ一体。いつもいつもいいムードをぶち壊す、このタイミングの良さは。

 オレは思わず、睨みながら周囲をみた。道路工事をしている作業員が、写真をとっていた。一体、どういうつもりだ、少し考えて撮影したらどうなんだ。

「工事風景を撮った写真に写りこんだみたいですね、先生」

 彼女の端末にも同様のメッセージが届いていた。彼女はすぐに「Yes」ボタンを押していた。

「先生、今日はついてますね。また臨時収入ですよ」

「ああ、そのその通りだ」

 一瞬、大人げなく「No」を押してやろうかとも思ったが、500イピの臨時収入は確かに大きい。オレはナノカの笑顔と誘惑に負けて「Yes」を選択した。

 心地よい入金音があたりに響いた。

 だが、さきほどから、アラームと入金音のせいで雰囲気はぶち壊しだった。オレはたまりかねて、カードPCの電源を切ることにした。

 ナノカにも電源オフをうながす。すると、彼女は素直にうなずき、いった。

「でも、その前にパシャ!」

 自分のほうにカードPCをむけたナノカは、カメラ機能を呼び出し、オレとのツーショットを撮影した。

 アラームが鳴る。

“利用許可:写真(肖像権)。利用目的:記念写真。申請者:ナノカ・リー。申請料:200イピ 許可しますか? 「Yes」「No」”

 オレは見飽きたメッセージに苦笑しながら、「Yes」を押した。

「その写真、オレもほしいな。送ってよ」

「いいですよ。じゃあ、送りますね――あっ、間違えた」

 ナノカが呟くと同時に、写真が届いた。

「間違えた? いや、ちゃんと届いたよ」

「コピーしたかったのに、データをそのまま、送っちゃいました」

「じゃあ、こっちでコピーして、送り返してあげるよ」

 届いたばかりの写真を複製し、オレが送信しようとした、そのときだった。

“コピーを配布しますか? 写真1枚:200イピ”

 そうだった。コピーにも料金がかかるんだった。

 オレはナノカから受け取った利用料金を、そのままコピー料金として支払った。なんとなく引っかかるものを感じたが、それがなんなのかよくわからない。自分の写真にイピを支払ったからだろうか。なんか変だ。

  なにか釈然としない。

 だが、そんなオレの思いをよそに、ナノカは一人で喜んでいた。

「これ、待ち受けにしてもいいですか?」

 さわやかに微笑むナノカ。ああ、やはり彼女は素晴らしい。

 オレは考えるのをやめ、カードPCの電源を切った。

 待ち受け設定を終えた彼女も、すぐに電源をオフにする。

「さあ、行こうか」

 今度はオレが彼女の手を引いた。

 オレたちは二時間ほどの恋愛映画を見たあと、カクテルバーに行って映画の感想を言い合い、遅くまで飲みあかした。そして、そのままの流れで、オレとナノカは、――一夜をともにした。

 

     *

 

「なんだこりゃ」

 翌朝、部屋にもどったオレは、カードPCの電源を入れ、奇声を発した。それというのも、ペイ・パー・ビューのお知らせメッセージが山のように押し寄せてきたからだ。

“利用許可:写真(肖像権)。利用目的:パンフレット作成のため。申請者:(株)ニュートラル。申請料:500イピ 許可しますか? 「Yes」「No」”

“利用許可:写真(肖像権)。利用目的:現地下見写真。申請者:ロロプ・トラベル。申請料:500イピ 許可しますか? 「Yes」「No」”

“利用許可:写真(肖像権)。利用目的:記念写真。申請者:リョウイチ・サクマ。申請料:500イピ 許可しますか? 「Yes」「No」”

“利用許可:写真(肖像権)。利用目的:記念写真。申請者:リョウイチ・サクマ。申請料:500イピ 許可しますか? 「Yes」「No」”

“利用許可:写真(肖像権)。利用目的:記念写真。申請者:リョウイチ・サクマ。申請料:500イピ 許可しますか? 「Yes」「No」”……などなど。

 件数は全部で、十件を超えており、すべて承認すれば、かなりの額のイピ(電子通貨)になる。

 が、これはおかしい。いくらなんでもおかしい。

 オレは背中に寒気が走るのを感じながら、頭を回転させた。

 特に後半のリョウイチ・サクマってのはなんだ。

 記念写真の背景に、どうしてそんなに写りこむんだ? 取り直してばかりだった? そんなバカな。

 オレは気を落ち着かせるため、コーヒーメーカーのスイッチを入れ、リビングのイスに腰かけた。

 そのとき、玄関のチャイムが鳴った。

 オレは心臓が止まるかと思った。

 この仕事場を知っているのは、ただ一人だからだ。

「や、やあ、キョウカ。久しぶりだね」

 オレはできるだけ、顔を引きつらせないようつとめながら、我が最愛の妻を出迎えた。最愛の妻は、ブランド品のファッションに身を包み、きつい香水のにおいを振りまきながら、遠慮なく部屋に入ってくると無表情な顔でいった。

「あなた、小説のアップは終わったでしょう。いつまで缶詰状態なの? それともなにか家に帰れないわけでもあったのかしら」

 ぐさり。

 外堀から埋められている……ような気がした。

「い、いや、それはだね。来月用のプロットとか、いろいろあって……まあ、かけてくれ、ゆっくり話をしようじゃないか」

「いいえ、結構よ」

 きっぱりと言い放つキョウカは実に男らしい。いや、キョウカはれっきとした女で、いや、そんなことはどうでもよくて……オレはなにをいってるんだ。

 頭の回転がうまくいかない。

 こんなときはちがう話題をふって、時間を稼ぐしかない。オレはカラカラに乾いた口を何とか動かした。

「知ってるかい、昨日のニュースでいってたんだけど……」

「ナノカ・リーって、素敵な方ね」

「なっ」

 見事に食い違う会話。オレは思わず素っ頓狂な声を出した。

「な、なにをいってるんだい? ナノカ・リー? 知らないなぁ」

「あら、ご存じないの? この方だけど」

 キョウカは恐ろしいくらい涼しい顔をして、ハンドバッグからカードPCを取り出し、アルバムフォルダから一枚の写真を呼び出した。

“ボーノ・ボーノ”でオレとナノカが手を握っている写真だった。

 どうして、こんな写真があるんだ。

 疑問と同時に答えが出た。田中空調だ。いや、しかし、どうして田中空調が撮った写真をキョウカが持ってる?

「い、いや、これはちがうんだ。その、ほら、あれだ……」

 何イピ支払ってもいい。だれかいい言い訳を閲覧させてくれ。オレは心の中で叫んだが、もはや、身動き一つ許されるような状態ではなかった。

「覚えてらっしゃらない? これでも?」

 店を出て、映画館に行く途中の写真。ナノカがオレのカードPCを楽しそうにのぞきこんでいる。

 そういや、この時も申請許可のメッセージが届いたころだ。なんとか土木測量……でも、わからない。どうしてキョウカが写真を持ってるんだ。

 オレが頭をかきむしっていると、キョウカは少しあきれた様子でいった。

「あなた、小説を書いているわりに、ものを知らないわね。これは探偵を雇って撮らせたものよ」

「探偵? いや、しかし、探偵が撮影したのなら、写真の利用申請はその探偵社の名前になるはずだ」

 ふん、とキョウカはものの見事に鼻で笑ってみせた。

「最近の探偵は、擬装用のペーパーカンパニーをいくつも用意してるのよ」

「なんだって!? で、でも、オレはきみのカードPCにデータを送っていいなんて、許可したおぼえはないぞ」

「許可がいるのは、新規申請かコピーのときだけよ。一度許可されたデータの場合、利用目的に変更がなければ移動させるのに、許可をとる必要はないわ」

 つまり、キョウカは探偵社のペーパーカンパニーから直接データをもらったということだ。彼女が報告書添付資料やパンフレットを作るとは信じがたいが、現時点でそれを完全に否定することはたしかにできない。なるほど、ナノカとのツーショット写真で感じた違和感はこれだ。ナノカがオレに写真を送ったときに、申請許可がこなかった。オレはそれがおかしいと感じていたんだ。(実際はおかしくないらしいが……ああ、くそうワグセン・ルールめ)

 もっと早くに気づくべきだった。オレは後悔した。が、もはや手遅れだ。

 キョウカがわざとらしい咳ばらいをした。やばい、スイッチが入った証拠だ。オレは反射的に首をすくめた。

「で、どうします? あなた浮気を認める? 認めない?」

 オレは唾をゆっくりと飲みこんだ。いい忘れていたが、キョウカは学生時代、女子レスリング部に在籍し、バカでっかいトロフィーをいくつももらっている。(困ったことに彼女はこれを片手でひょいひょい持ち上げる)

「しらを切るのは結構ですけど、とりあえず、あなたのところに来ている写真の利用申請をすべて認めてもらえるかしら。そうすれば、すぐに私のところに残りの写真も転送されるようになっているから。このあと、なにもなければ、許可してくれますよね。あなた?」

 オレはこのあとのことを思い出し、口をパクパクさせた。

 あんなことや、こんなことをしている最中の写りこみ写真があるにちがいない。

 オレは最後の力を振り絞り、精一杯の笑顔を見せた。

 だが、キョウカは氷の彫刻のような顔で、咳払いをひとつするだけだった。

 

 

 

 

 

 えっ、このあと、どうなったかだって?

 そりゃ決まってるだろう……、ここから先はペイ・パー・ビューさ。

〈了〉


奥付



ペイ・パー・ビュー


http://p.booklog.jp/book/41931


著者 : 八海宵一
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/yaumiyoiti/profile


感想はこちらのコメントへ
http://p.booklog.jp/book/41931

ブクログのパブー本棚へ入れる
http://booklog.jp/puboo/book/41931



電子書籍プラットフォーム : ブクログのパブー(http://p.booklog.jp/
運営会社:株式会社paperboy&co.



この本の内容は以上です。


読者登録

八海宵一さんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について