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ストーリー5

 ヒロムは、東横線の各駅列車に乗ってウトウトとしていた。
 営業の外回りで、今日は横浜から渋谷へと向かっていたのだがヒロムは激しい眠気に襲われていた。
 
 おかしい。深夜、柿ピーを片手にビールを飲みつつ、録りためたワイドショーの健康情報を見ながら、ヒーローたる自分のヘルスチェックを夜な夜な実施してきたにも関わらず、不健康な眠気に苛まれる事などあるものだろうか。ありえない事だ。そう、あってはいけないことだ。

 さっきの食堂のおばちゃんに眠り薬を盛られたのか? どうも、俺の顔をじろじろ見ていると思ったが。眠い。眠すぎる・・・。あのおばちゃん、秘密結社のスパイか・・・。

 ヒロムは気が付くと列車の中にポツンと横たわっていた。車外はすっかり暗くなっている。ここはどこだ。周りには余り人がいない。車内を見回すと人数も疎らになっていた。昼間乗った電車だが外はすっかり闇に包まれていた。さっきの眠気はどこか不自然であった。なにか超常現象が起こったに違いない。

 そう! これは「幽霊電車」だ ! 俺は幽霊電車に乗ってしまったのだ! 時空を超えて、世界の境界線を飛び超え、いまや世界の果てへと向かう闇の空間を突き進んでいるのだ! この列車は幽霊電車なのだ! 恐ろしすぎる! 恐ろしすぎるぞ、アメリカマンたる俺の因果な引力!

 辺りを見渡すと、お揃いの青カバンを背負い、眼鏡をかけた少年たちの一団がいる。眼鏡の妖精だろうか、ヒロムは優しく話しかけずにはいられなかった。
「こんにちは、君たち少年。君たちはどこに行かれるのかな?  眼鏡の国かい? はたまた、レンズの国かい?  おじさん、この列車は初めてなんだ。どこにいくかワクワクね。だけど、どうせなら楽しいところに行きたいよね。ネバーランドには行ったことがあるかい。おじさんはね、そこに知り合いがいっぱいいるんだよ。どうせならネバーランドがいいかなー。子供に戻っちゃうぞ、なんちゃってね。あはははは。ネバーギブアップ! らららー ♪らららー ♪らららー♪ 」

 優しく話しかけるヒロムを余所に、突然、子供たちは無表情に語りだした。
「僕達は、おじさんのような大人がいない社会を形成するべく養成されたエリートなんです。世の中のくずは全て海洋に打ち立てた夢の島で大々的に処理をする、そんな夢列島を打ち立てるんです。そして、僕達は労働階級を馬車馬のように働かせエリート公務員宿舎を各地に建造する事で夢のゴールドラッシュ大フィーバ順風円満を味わいつくそうと、そう考えているんです。おじさんは、まさに人柱って感じだよね。あはははは。」

 ヒロムは恐ろしくなった。恐ろしい巨大組織が幽霊列車に乗って極秘密裏にプロジェクトを推進していたのだ。夢の島、ゴールドラッシュの為に大勢の人達が犠牲になるのだ。ひとまず、この車両を離れなければ、このままでは夢列島で食肉にされてしまう。準備を整えてこの国を守らなければ。

 ヒロムは大慌てで窓から飛び降りようとした。誰かが足首を掴んでくる。ヒロムはもがいて、その手を振りほどいて列車から飛び降りた。ばたむ!

 ・・・うっ。ヒロムは気が付くと線路沿いの草むらで倒れていた。幽霊列車からは脱出したのだろうか・・・。すっかり日は明るくなっていた。全ては夢だったのかもしれないな・・・ハハハッ、今日は仕事は休もう、ヒロムは笑顔で自宅へと歩き始める。<つづく>

この本の内容は以上です。


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