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唱えよ

お話を書いていて急に目眩がした。自分がよそよそしく感じられ、まるで赤の他人。こっちがお話の登場人物みたいだ。デジャヴはデジャヴに重なり、踏みしめるべき大地は霞んで見えない。他人の私が呪文を思い出そうとしてる。唱えよ!……とっぴんぱらりのぷ……
 

彼女の船旅

ソファーで横になっていた彼女の隣に座ったら目を覚ました。そして……「ここは家だっけ?」……と聞くのだった。寝ぼけてるらしい。どこだと思った?と聞いたら……「船」……と彼女は答えた。大きな船?と聞いたら……「うん」……と頷いた。その船にはぼくもいたかな?と尋ねたら。目をそらした。

 

お引越し

可憐な少女の霊が出るという屋敷が取り壊されそうになった。救ったのは外国のお金持ち。彼は屋敷ごと船に積み込むと、新大陸に移築した。少女も住み慣れた家についていったらしい。……「ったく、可愛いと得だよね」……とは姉の感想だ。
 

木の根

うつむいて歩くと見てしまう。古い木の根っこ。地面をわしづかみにして盛り上がり、少しこわい。でもそれをいえば 空を抱こうとしてひろがる 枝だって……
  

いわずもがなのなにかしら

夜。いわずもがなのなにかしらが訪れた。いわずもがなのなにかしらは古い友人のような顔をしてお茶を飲む。勝手に!ひどく腹立たしいが。私は、いわずもがなのなにかしら対して完全に無力だ。後ろから忍びより、エイヤッと包丁で斬りつけても無駄なこと。断ち切れない、というのがいわずもがなのなにかしらの性質なのだ。はもう諦めた。一緒にお茶を飲むしかない。
 


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