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【グラフィカルな食品の国】

 黄色いマカロンが、赤いマカロンと話していた。

 「今日は、どの窓を見る?」

 「どこでもいい」

 「どこでもいいの?」

 「どこでもいいけど、おもしろい人間が見える窓がいい」

 「そういうの、困るなぁ」

 

 お米のノガたも、そろそろ、窓をのぞきにいかないといけないなあと思った。

 「ところで、ぼくは、今どこにいるの?」

 お米のノガたは、誰かに聞いた。

 「…」

 「この辺りには、誰もいないのか…」

 お米のノガたは、てきとうな方向へ歩き出した。

 

 バカラのグラスが落ちていた。お米のノガたは、石を投げてバカラのグラスに当てた。

 ちゃらん! バカラのグラスが鳴った。

 

 「だれ?」

 後ろで声がした。

 お米のノガたが振り返った。

 クリスタルガイザースパークリングレモンがいた。

 「お米さんか。名前は?」

 「ノガたです」

 「クリスタルガイザー飲みますか?」

 「はい、飲みます!」

 クリスタルガイザースパークリングレモンがバカラのグラスにクリスタルガイザースパークリングレモンを注いだ。 ノガたが飲んだ。

 おいしい!しゅわぁ~~~~~~~っ

 「クリスタルガイザーさん、お名前は?」

 「メグです」

 「メグさん。女性だったんですか?」

 「いえ、男性です。名前のせいでよく間違えられるんです」

 「そうなんですか。ところで中身がそろそろ無くなりますよ」

 「そうですね、ノガたさんも、少し古くなってきていますね。私たち、窓を見に行かないといけませんね」

 「今から二人で行きましょう」

 

 「ぼく、石がないんです」お米のノガたが言った。

 「じゃあ、私の石を二つに割ります」

 メグが石を二つに割った。

 お米のノガたとメグがそれぞれ石に乗った。

 この国では石が空を飛べた。

 二人は空を飛ぶ石に乗って、大聖堂に向かった。

 

 この国の中心に大聖堂があった。大聖堂には無数の窓があった。窓をのぞくと人間の暮らしが見えた。別の窓をのぞくと、また別の人間の暮らしが見えた。窓の一つ一つが別々の人間の暮らしを映していた。

 

 この国は食品たちの国だった。食品たちは、人間の暮らしを見ることが好きだった。今日もたくさんの食品たちが大聖堂にやってきて、人間の暮らしを見るために窓をのぞきこんだ。

 

 お米のノガたとメグも窓をのぞきこんだ。人間がカレーライスを食べていた。山盛りだ。とても山盛りだ。東京スカイツリーを模しているらしい。人間の暮らしを見ているうちに、お米のノガたの体が新鮮になった。ひび割れもなくなった。きれいになった。とれたてのお米になった。メグも、残り少なくなっていたクリスタルガイザースパークリングレモンの中身が補充された。工場出荷時のようになった。

 

 この国では、人間の暮らしを見ると、食品たちが新鮮な状態に戻った。人間の暮らしを見ないでいると、次第に鮮度が落ち、腐り、ちてしまう。人間の暮らしを見ることで、食品たちは定期的に若返っていた。そして、何年も新鮮なままで生き続けていた。

 


【終わりに】

 クリスタルガイザーにはレモン味があったのですね。 知らなかった。

 


この本の内容は以上です。


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