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猫は飼い主に死ぬ姿を見せないと言うのだから、一週間も帰ってこないアイツはどこかでひっそりと死んだのかもしれない。

 

ふと小学校の時の薩摩芋の苗付けを思い出した。毎年高学年が畑を耕して低学年が苗付けをしていた。ある年、高学年の女子が畑を耕す途中で猫の死体があると大騒ぎをした。

半白骨の死体処理を任せられた用務員は、放課後に顔を顰めながら畑の真ん中に深く穴を掘り、そこへ猫を埋めるところを俺は偶然見てしまった。翌日何も知らない低学年の生徒が畑に苗付けをし、秋には大豊作でふかし芋が給食に並んだ。けれど猫の養分を吸って豊作になったと思った俺はどうしても芋を食べられなかった。芋は猫の墓に見えた。

死んだ猫は飼い猫だったのだろうか。飼い主に知られないよう学校の草むらで死んだのだろうか。飼い主は探したのだろうか。

俺はここで死んだら誰にも見つからず薩摩芋になることもなく、白骨化するのだろう。それならいっそ生ゴミのように燃やされたい。

フリーターでその日暮らしの俺なんて野良猫みたいなものだ。突然居なくなっても誰も気に止めはしない。束縛のない自由は孤独という恐怖をいつも背負っている。

俺は俺に似た生き物を拾って可愛がることで、逆に俺が可愛がられているような錯覚を味わっていた。背負っている恐怖は少し和らいだ。猫には鈴付の首輪をさせた。チリンと小さな鈴音が独りではない印になった。

 

外ではゴミ収集車が騒々しく収集を始めた。その音に混じってチリンと鈴音が微かに聞こえたような気がした。急いで窓を開けるとゴミを集め終わった収集車が走りだしている。ゴミに混じっているのは猫ではなくて自分のように思えた。

俺は収集車を止めるために部屋を飛び出した。

 


この本の内容は以上です。


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