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てきすとぽい杯について
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各夜のお題
第17回 募集要項
第17回 審査結果
入賞作品紹介
《大賞》
『百鬼夜行の客商売』 みお
《入賞》 ※得票順/シリーズ作品は並べて掲載
『ヘッセ』 犬子蓮木
『高速道路』 粟田柚香
『集合住宅』 粟田柚香
『シーサイド・ヒル』 大沢愛
『ルーインズ』 大沢愛
『スタティック』 大沢愛
『クリスタル・ムーン』 大沢愛
〈候補作品〉 ※得票順/シリーズ作品は並べて掲載
『The Friendly Ghost』 碧
『The Not-Friendly City』 碧
『創造主の箱庭』 kenrow
『生々しさ』 フィンディル
『幽霊アカウント』 muomuo
『男死病』 muomuo
『名無しの少年』 muomuo
『絆』 muomuo
『そうやって大人になっていく―丁稚安吉の場合』 志菜
『せやせや』 せせせ
『曲り角奇譚』 茶屋
『幽霊屋敷に住むものは』 永坂暖日
『便利な家』 ◆BNSK.80yf2
『助手席の彼女』 永坂暖日
『できごころ』 しゃん@にゃん革
『幽霊屋敷の浴室』 山田佳江
『桜屋敷』 茶屋
『幽霊の生業』 豆ヒヨコ
『幽霊船』 小伏史央
『幽霊屋敷の記憶』 三和すい
『記憶喪失になった俺が大学受験に挑むのだ』 ひこ・ひこたろう
『館長さん』 晴海まどか
『怪談は幽霊屋敷で』 松浦徹郎
『幽霊空き家』 永坂暖日
『九朗右衛門事件帳』 茶屋
『幽霊屋敷の一件』 碓氷穣
『歌声』 茶屋
『ぼくがいまよみたいしょうせつてきすとぽいばーじょん』 ひやとい
『歴史の勉強』 しゃん@にゃん革
『新幹線の中で』 ひこ・ひこたろう
『ぼくとお屋敷』 犬子蓮木
『紅白歌合戦の舞台に俺は立ったのだが』 ひこ・ひこたろう
『幽霊屋敷から出て来たのは古切手』 ひこ・ひこたろう
『大学祭』 ひやとい
『薔薇の香り』 げん@姐さん
『Haunted Horizon』 木野目理兵衛
〈集計外作品〉 ※投稿順
『柿のお供え』 高田@小説垢
『僕がオトコノコを止めた理由』 文才無い魔女
『変な旅』 鳥居三三
〈関連作品〉
関連作品のご紹介
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『ぼくとお屋敷』 犬子蓮木

第三夜エントリー
投稿時刻 : 2014.05.05 23:39
総文字数 : 3027字

獲得☆3.125
 ぼくはこのお屋敷に住んでいる。大きなお屋敷でいつもキラキラしていて、住んでいる人も働いている人も大勢が動いているこのお屋敷で、誰にも認識されずに住んでいる。
 つまりは幽霊ってことなんだろう。
 このお屋敷は元はぼくのお父さんが持っていたもので、ぼくも今、住んでいる人たちみたいに、豪勢な暮らしをしていた。毎晩、おいしいごはんを食べて、笑って、お手伝いさんをからかって遊んだりしていた記憶がある。
 だけど、そんなぼくの一生はとても短かった。
 名前もよくわからない病気になって、ベッドから出ることもできず、そして死んでしまった。死んだ後と言えば、ぼくはすぐ今みたいな幽霊になっていたのだけど、お父さんもお母さんも執事もメイドもぼくには気付いてくれないし、それから数年して、お父さん達はどこかに引っ越してしまった。
 ぼくをおいて。
 そうしてこのお屋敷に新しい家族が入って、出て、入ってを繰り返し、いまの家族が暮らしているというわけだった。お父さんとお母さんとお嬢様とその弟、それから執事とメイドとコックさんやたくさんの人たち。
 もう、認識してもらえない悲しさも忘れて、なんでものぞき見できる楽しさにも飽きたというぼくにとって、この幽霊という状態がなんのためにあるのかはまったくわからなくなっていた。
 死んでしまいたい。
 もう死んでいるけど。
 成仏とかいうんだろうか。
 意識がなくなるか、せめて話ができるような相手のいるところに行きたいなと思う。天国とか、なんかもう地獄でもいいやって。
 屋敷の一室で、椅子に座っていた執事のおじいさんが涙を流していた。メイドさんやお嬢さんが泣いていることはよくあるけど、このベテランの執事さん泣くなんて今まで見たことがなかったので、ぼくは驚きながらおじいさんを見ていた。
「どうすればいい……」執事が呟いた。
 おじいさんは何かになやんでいるようだった。手に持っていた紙になにか書いてあるようなので、ぼくはそれをどうにかして読んでいった。
 誘拐。孫。お嬢様。命。警察。
 執事のおじいさんは頭を抱え込んでいる。全部を読めたわけではないけれど、おじいさんはどうやら孫を誘拐されたらしい。そして、その孫を無事返す代わりに、このお屋敷のお嬢様を誘拐することを手伝えと脅されているようだった。そうして、犯人は、お嬢様に対する身代金として、大金を要求するのだろう。
 ぼくはそのお嬢様のことをどちらかと言えば嫌いだった。かわいいらしいところがなにかイヤで。
 でも、どうにかしてあげたい気持ちもある。誘拐は悪いことだ。だから、たとえばぼくが幽霊としての力を駆使して、犯人を脅かすとかなんかして事件を解決したりすればいいお話になるだろう。
 だけど、それはできない。
 ぼくは現実にはなにも干渉できないんだ。
 なにか物を動かすことも、声を出して驚かすこともできない。ぼくにできるのはただ知ること、考えること、そして祈ること。それだけなのだ。
 執事のおじいさんは、何かを心に決めてしまったらしい。部屋をでて、別の部屋に向かう。行き先は電話のある部屋でもないし、主人のいる部屋でもないようで、お嬢様の部屋に向かっている。
 警察に連絡するのでもなく、主人に話すのでもなく、つまりはそういうことなのだろう。
「お嬢様、失礼致します」
 ドアの外でノック。さっきまでの泣いていた様子はどこにも見あたらない。これも今までの経験からできることなんだろうか。ドアが開き、中からでてきた子に笑いかけたその顔が、ぼくにはとても恐ろしく冷たく感じられた。しょうがない。だけど、なんで、苦悶が見ることができないのだろうと。
 執事のおじいさんは嘘をついて、駐車場へと連れて行く。執事の前を進む、ピンク色のスカートがかわいかった。ぼくの嫌いなスカートだけど、いまそんな気持ちよりも悲しさが強い。車に乗せて、どこかへ行くつもりだろうか。
 にげて、と思った。
 声には出さない。もう何年も声なんて出していない。ぼくの声は誰にも聞こえなくて、ぼくの耳にしか入らないのならば声を出す必要がない。さけぶような思いも、そんな習慣のせいで、ただ思うだけになってしまう。
 駐車場。執事のおじいさんはいつも通りのやさしい動きで、車のドアをあけた。スカートが一瞬ふわっとなって、それから後部座席で落ち着いた。
 ぼくはまずい、と思った。
 ここで生まれてここで死んだぼくは、この屋敷からでることのできない幽霊なのだ。もちろん、ついて行ったってなにもできない。ぼくがここにいたって、誰も気付かないし、ここが幽霊屋敷だなんて思うことすらしない。ぼくはただのやじうまだとわかっている。知りたいという欲求だけで、うわさ話が好きなメイドさんたちとかわらない。
 車が動き出す。大きな庭をゆっくりと走り、門の方へ。ぼくはまだ車の中にいられる。だけど、もうすぐ置いていかれる。お父さんとお母さんの乗った車が、ぼくを残してこの屋敷から出て行ったときのように。
 行かないで、と思った。
 そのとき、声が聞こえた。
「ぼくをどこに連れて行くつもり?」無邪気な笑い声。
 お嬢様? 違う。執事もそれに気付いたらしい。車が止まった。
「お姉ちゃんだと思った? 違うよ、僕だよ」
 俯いていた少年がなんにも知らずにほほえんだ。車に乗っていたのは、お嬢様の弟でこのお屋敷の跡継ぎの少年だった。
 執事のおじいさんは運転席で震えていた。その普段とは違う様子に少年もなにかに気付いたらしい。
「ごめんなさい。お姉ちゃんと服を交換して遊んでたの。怒らないで……」
 執事は涙をこぼしていた。それを少年に見えないようにぬぐって、ふりかえって微笑んだ。
「怒りませんよ。お屋敷に戻りましょう。こちらこそ申し訳ございません。お嬢様をお連れするお約束自体が私の勘違いでございました」
 車が庭の噴水をまわって駐車場へと引き返していった。
 その後、執事のおじいさんは主人に事情を話し、お屋敷は大騒ぎとなった。それでもやってきたおまわりさん達がちゃんと働いてくれて、執事のお孫さんも無事、救出されたようだった。
 結局、ぼくはなにもできなくて、ただ事件がはじまって終わるのを眺めていることしかできなかった。事件のあと、ふらふらとお屋敷で遊んでいたぼくは、あの執事とお嬢様が話しているところを目撃した。
「どうして正直に話すことにしたのですか? 戻ってきて、わたしを連れて行ってもよかったでしょう」
「……そうですね。ただ、私はじぶんに幻滅したのです。いくら服装が変わっていたとはいえ、仕えるべきお嬢様とご子息を間違えるなどという大きな失態をおかした自分自身に」
「そう」お嬢様は微笑んだ。「よくわかりません」
 やっぱりこのお嬢様はバカで、あまり好きになれない。ちょっとだけ誘拐されちゃえばよかったのにとか思った。いや、それは嘘。そうしておこう。
 そんな嫌いなお嬢様でも、ぼくが気になっていたことを聞いてくれたのでよしとしよう、と思う。
 この執事のおじいさんが、どうして思いとどまったのか。それはずっと気になっていたんだ。はたから見れば冷静ですごい怖かったけど、中身はやっぱり動揺してたんだなってぼくは安心した。
 こんなことがあるから幽霊ってのいいかなと思う。
 それにさ、やっぱり男と女を間違えるなんて失礼だよね。ぼくも生きていたときはよく間違えられたんだ。いくらスカートをはくのがイヤだったからって、男の子と間違えるなんて失礼しちゃうよね。
 いまでもスカートなんてはかないけどさ。

<了>   

『紅白歌合戦の舞台に俺は立ったのだが』 ひこ・ひこたろう

第一夜エントリー
投稿時刻 : 2014.05.03 23:23
総文字数 : 1379字

獲得☆3.083
 芥川賞を受賞したので、もっと引っ張りだこになるかと思いきや、ブログやツイッターで馬鹿なことばかり書いていることがバレてしまい、桜を見る会や園遊会には呼ばれずじまいだった。それでも、アイドル好きを隠さなかったことが功を奏したのか、年末の紅白には特別審査員として招かれることとなった。「森保まどかがHKTを卒業するまで、ボクも恋愛禁止です!」などとGoogle+に書いたりしたのだが、求愛とは受け止められず、単なる冗談だと理解されたようなのである。俺みたいな危険人物を森保まどかの半径100m以内に接近遭遇させるとは、NHKもいい度胸だ。そんなことを思いながら、審査員席の片隅に陣取る。右には女優の北川景子が、そして左には横綱・鶴竜がいる。美人とデブに挟まれたチビの太ったおっさんである俺は、幽霊屋敷から直行したかのような魔女のコスプレで登場し、かなり目立っている。
「高山さん、その格好は?」と紅組キャプテンの指原莉乃が訊くので、俺は機嫌よく
「プチMなので、マゾ(魔女)の格好で来ました」とボケてみた。

 おや? 何だ、この会場の雰囲気は……。

 指原莉乃は俺の返事もろくに聞かず、あらぬ方向を向いている。完全なシカトだ。困ったもんだ。こんなことになるくらいなら、紅組キャプテンなんて、綾瀬はるかに続投させればよかったのだ。
 しかし、俺がすべっただけにしては、様子がおかしい。スタッフも駆け回っている。ただならぬ気配を察した俺が、
「あのう……」と口を開きかけた時、
「どなたかお客様の中に、東李苑の代役としてEscapeのキーボードを演奏できる方はいらっしゃいませんか?」と指原が切羽詰った表情で会場に問いかけた。
 三秒ほど待ったが、会場はざわめくばかりで手を挙げる者がいない。仕方なく、俺が手を挙げた。しかし、審査員である以上、SKE48としてステージに立つわけにはいくまい。どうせ、却下されるだろう。
 ところが、である。
「じゃあ、お願いします」とスタッフに促され、俺はステージに向かった。
「あのう、審査は?」
「そんなの、どうでもいいです」
 どうでもいいのか? まあ、そうだろうけど。

 俺は中途半端なのは嫌いなので、コスプレにも気合が入っている。スカートを穿いたのは当然のこと、股の間には空飛ぶ箒がしっかり挟んである。といっても、この箒の柄には小さな穴が開いており、その小さな穴には俺の小さなナニが突っ込まれているのだ。そう、俺は加齢のせいもあって小便が近く、紅白の長丁場には耐えられない。そこで工夫を凝らし、こうして特殊なおまるを製作して持参したというわけだ。
 股の間の箒をぶらぶらさせながら、階段を上り、キーボードの前に立つ。そして、俺の指が奏でるヴィヴァーチェを合図に、SKE48の「Escape」は始まった。激しく踊るSKE48の後ろで、股間の箒を揺らしながら乗りに乗ってキーボードを演奏する俺。俺はセックスと掃除は苦手だが、言い訳と楽器の演奏だけはプロ級なのだ。
 そして、演奏は終わった。観客の悲鳴にも似た叫びに俺たちは包まれる。感動的な一瞬だ。汗はびっしょりだが、この達成感が心地いい。みんなに手を振って、おじぎをする俺。
 だが、おじぎをした俺が見たのは、自分の足元に落ちた箒だった。これでスカートがずれ落ちたりでもしていたら洒落にならん、と思いつつ、俺は自分の腰に手をやった。

『幽霊屋敷から出て来たのは古切手』 ひこ・ひこたろう

第三夜エントリー
投稿時刻 : 2014.05.05 23:25
総文字数 : 1187字

獲得☆3.000
「おじさんの家には大金があるはずなんだ」と同級生の中村くんが言った。
「あんな幽霊屋敷に?」僕は半信半疑で聞き返す。
 そのおじさんとやらは、浮気がバレて女の人と一緒にどこかに逃げたらしい。残された奥さんは預貯金を処分し、実家に帰ってしまった。残ったのは廃墟と化した洋風な館だけだった。
「もし宝物を見つけたら、半分あげるから、一緒に探してよ」
「宝物って何だよ?」
「わかんないけど、あるんだよ。宝物が」
 しかし、こんな田舎にも手癖の悪い連中はいるらしく、テレビや冷蔵庫、布団に衣類、はてはトイレの電球までもがすでに盗まれており、家の中は荒れ放題だった。この上、何の宝物があるというのであろう。
 昼間だというのに、薄暗い部屋の中をあちこち歩き回る。何となく怖い気持ちが先立ってはいたものの、何十年も前の古いガラクタを目にすると、昔の世界にやってきたようで、ちょっとだけ楽しい。
「はあ、やっぱり宝物なんてなさそうだね」
 中村くんだって、まさかここまで散らかっているとは思わなかったのか、完全に諦めモードだった。僕はそんな中村くんの落胆振りが見ていられなくて、口から出まかせを言った。
「ほら、ごらん、あの壺。あれなんか、鑑定団に出したら、高い鑑定結果が出そうだよ」
「はぁ……」中村くんは溜息をついた。「あれはお父さんが骨董屋で一番安かったのを選んで買って、おじさんにプレゼントしたもんさ。高いわけないよ」
「何だ、そうなのか」残念に思いつつも壺に近づいた僕は、ついその中を覗き込んだ。
 おや、何かある。
 中村くんを呼んで壺をひっくり返してみると、中には切手の束があった。額面は10円とか5円とかで、消印はないけれど単色の雑な印刷だ。こんなもんだって金券ショップに持っていけば、アイスクリーム代ぐらいにはなるかもしれない。
 そう思って、僕たちは金券ショップに切手を持って行った。しかし、店のおじさんは、「子供は無理だよ。お父さんか、お母さんを連れて来なさい」と取り合ってくれない。
 仕方がないので、切手は約束通り山分けし、僕はそれを大切に保存しておいた。
 それから二十年が経った。東京オリンピックが決まった時、僕はその時の切手のことを思い出した。なぜなら、その切手は東京オリンピックの記念切手だったからである。本当に単色刷りの貧相な切手なのであるが……。
 ネットで検索し、その値段を調べてみると、森永のアイスじゃなくて、ハーゲンダッツのアイスが買える程度の値段にはなっていた。おい、日本政府、もっと品薄にするとか考えなかったのかよ! 希少価値なんて全然ないじゃないか。まったくもう……。
 しかし、東京オリンピックって1964年じゃなかったっけ? 切手には1940年とか書いてあるものも混在しているんだが。まあ、印刷ミスなら印刷ミスでマニアもいるらしいので、今度切手屋さんに持っていって鑑定してもらう価値はありそうだ。

『大学祭』 ひやとい

第一夜エントリー
投稿時刻 : 2014.05.03 23:04
最終更新 : 2014.05.03 23:16
総文字数 : 919字

獲得☆2.923
 小学校高学年の時、家からは遠かったが、後に学校から出入り禁止通達が出るほどの人気駄菓子店だった近くに短期大学があった。まるで今で言う専門学校のような狭い土地にあった学校であったが、小さい頃から美少年の誉れが高かく、もちろん当たり前のようにその駄菓子屋に友達と主に通っていたから、駄菓子屋通いのついでに気安く短大をふらつき、そしてカワユスな(古い)女子短大生と仲良くなるのは、もう必然に近いものだった。
 なので大学祭シーズンになるとレッセフェールが如く(意味がわからない)出入ってみたわけだったが、当時そんなことをする小学生はあまりいなかった上に美少年の誉れが高かったので非常に可愛がられ、あんなことやこんなことを……まあ今回の趣旨とは離れるのでこのくらいにしておく。
 で、大学祭といっても大したことはできないので、喫茶店とか美術部の展示とかそういうものが主だったが(スーパーフリーなどという発想のないおおらかな時代だった)、そこには当然幽霊屋敷めいた催し物もあるわけだ。
 大げさなものではない。その当時よくあったように、任意の教室を暗くして脅かすだけのものだ。
 当時小学生だったので、入るなり、いきなりへいへいピッチャービビってるー(早坂あきよと香坂みゆきのBIBIではないので為念)的なことになり、しかも怖がりなので、つい脅かしてきた男子短大生(当時は短大に男子がいるのは当たり前のことだった)に力の限りパンチを食らわし、「いってぇー」という叫び声を背中で感じながら脱兎のごとく逃げ出したものだった。悪いことをしたなあと今だから思うのだが、ドジでマヌケでアホな勉強の出来ない小学生にしかるべき常識的な判断は望むべくもなかったのである。その時の人殴っちゃってごめんなさいね。
 で、結局その大学祭を期に、ビビりでヘタレな小学生はそれきり大学に行くことはなかったのだが、そこでたまたま買ったど根性ガエル第12巻へのへの箱の巻を学校に持っていった際、クラスメイトにチクられて先生に没収されたことは、30数年経ってもちょっとだけ腹立たしい思い出として残っているのである。
 もし会うことがあったらネチネチとネタにして話そうかと思っているのは密かな楽しみである。

『薔薇の香り』 げん@姐さん

第一夜エントリー
投稿時刻 : 2014.05.03 23:24
総文字数 : 987字

獲得☆2.909
町の外れの竹やぶの先
そこに、その屋敷はあるという。
とても大きな、赤い煉瓦の素敵な屋敷。
庭師が手塩にかけて育てた薔薇が其処此処に咲き誇り、
中に入れば毛足の長い深紅の絨毯にシャンデリアの煌めきが落ちる。

そこに、あなたがいる。

ある時は本の香りに圧倒される書斎のソファで、オットーを語り合い

ある時は白い東屋で朝露の光る薔薇を見ながら庭師の話を聞いて、紅茶を愉しみ

ある時は大きな暖炉の前でマントルピースの上の写真を見ながら家族の話を聞き

ある時は広くて持て余しているという食堂で、ばあやが腕によりをかけたフルコースに舌鼓を打ち

ある時はあなたのくれたドレスを着てボールルームで二人きりのダンスパーティーをしてみたり

ある時はメイドとともにあなたが好きだというお菓子を焼いてみたり

ある時はあなたに寄り添って空の星の物語を聞いて夜を過ごした

そのどれもが、すてきな時間で、私はほんとうに幸せで仕方ない。
いつ、どうして、私が竹やぶの先のお屋敷を見つけたのかは覚えていない。
確かなのは、はじめて会ったその日からあなたは優しくて、 それは今も変わらないということだけ。


けれど、私がそう言うと、皆が奇妙な顔をする。
頭がいかれているんじゃないかなどと、暴言を吐き捨てる人までいる。

あそこは幽霊屋敷だという。
元は地主の住む大屋敷だったが、没落して街を捨てたのだと。

屋敷内の数々の調度品を狙い、不届者が何人も侵入しようと試みた。

だが手入れする者を失った竹やぶは、来るものを拒むようにその幹を太く伸ばし続け、
辛うじてその竹やぶを抜けた者も、同じように主を失った薔薇の蔦が縦横無尽に絡みつく錆びた門扉にその足を阻まれる。
その先の煉瓦の屋敷は窓ガラスやステンドグラスが割れて見る影も無い。


次第に屋敷の、割れた窓ガラスの先に、人影を見たと噂する者があらわれた。

そうやって人影を見た者は、街に戻ってすぐは何ともないのだが、徐々に精神に異常を来たして自ら命を絶ってしまう。
今となってはあの屋敷に近づこうとする命知らずは一人も居なかった。

この街では、屋敷は呪われた幽霊屋敷と呼ばれる
以前の栄華は見る影も無い荒れ果てた屋敷だという。
目を覚ましてくれと、さめざめと泣く母を振り切り、今日も私はそこへ行く。

幽霊屋敷…?
どんなところだって構わない。
竹やぶのその先、ほら、薔薇の香りがするでしょう?

私にとって、そこはあなたに会える場所。


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